【ヤマコウの時は来た!】

 ◆10R:準決

 ローズカップは見応え十分だった。深谷知広と脇本雄太の、先行選手の意地とプライドのもがき合い。昔も今も、ファンが熱狂するのはそこだと思った。若い選手は非常に参考になったのではないか。

 意地を貫くといえば、10Rの諸橋愛もその1人だ。今年8月、弥彦G3優勝の表彰式での涙が、記憶に新しい。その後の、共同通信社杯の優勝は、涙が見られなかった。「実は表彰式の前に泣いていました」と照れ笑いしたが、レースの話になると表情が引き締まる。

 「今年は単騎で走るレースも多かったし、準決も1人が自然かなと思って」と走りについて話した。「KEIRINグランプリの賞金や連勝など全く気にしていませんが、気持ちはすごく充実しています。弥彦G3の前に心境の変化があってから成績が変わりました。その理由は引退するまで話すつもりはありませんが、変わった選手がいてもいいかなと思います」。

 これは、前回の松戸G3決勝のことを指しているかどうか分からない。しかし、あの決勝は今のライン戦の限界が見えたレースだと思っている。番手を回る選手はしっかり下積みしてなければ、かえってラインがもろくなる。レースにこだわりがなくなり、タイミングで仕掛ける選手が増えた結果、人気を背負っても簡単に負けることが多くなった。その中で、諸橋は追い込み選手としては王道ではないかもしれないが、ブレないことで周囲に認められてきた。

 先行は深谷だろうが、諸橋の隙を突いた走りは要注意だ。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)