若松孝之(30=三重)が一般1Rの出走後に引退を表明した。当日の朝まで一部の選手しか知らされておらず、突然の発表に関係者は一様に驚いていた。

「谷田(泰平)さんが積極的に行ってくれた気持ちがうれしかった。内に詰まらず、外を踏めて良かった」。7着だったラストランの直後は、連係した谷田に肩を抱かれ涙があふれた。

96期は、東京五輪出場を目指す深谷知広、雨谷一樹や、プロ野球から転向した松谷秀幸ら精鋭ぞろい。若松はデビューからS級初勝利まで7年もかかった苦労人だった。

競輪選手に限界を感じたわけではなく、引退理由は家庭の事情。「足りんかったこともあったし、やり切ったわけでもない。悔いばかり残る」と無念さをにじませた。

一緒に参加していた柴崎淳は「参加直前に聞いた。同じ練習グループで高校の後輩。後輩が先に引退してしまうのはつらい」と目を真っ赤に腫らした。

最後に若松は「これからは金網の外からガンガンやじって応援します」と仲間にエールを送った。今後は妻の実家が経営する土木建築業の会社で、第2の人生をスタートさせる。