中村晃朋・桃佳きょうだいは、幼少時にボートレースファンだった父に連れられて丸亀ボートを頻繁に訪れた。「習っていた少林寺拳法の練習が厳しかったので、ボート場に来ると何かホッとして楽しかった」と口をそろえる。2人はレーサーになりA1級の選手として活躍している。

かつては子供を連れて気軽に来られる場所ではなかった。レースごとに怒号ややじが飛び交う鉄火場だった。だが今は違う。特に週末の風景は一変している。12年にリニューアルされた新スタンドのクリーンなイメージに伴い、家族連れ、若者向けのイベントも充実してきた。

イベントを担当する丸亀ボートの直井俊樹さんは、「新スタンドになり、小室哲哉やCrystal Kayを呼んだ『MARUGAME GROOVE』を始めた数年前から、若い世代やファミリーを意識して、ファン層の拡大を考えるようになりました。その成果が徐々に出てきました」と話す。

イベントは競走水面でカヌーやゴムボートを楽しむ「ウォータースポーツフェス」や人気アーティストを集めた音楽フェス「MARUGAME GROOVE」。他にも周辺のうどんやパンの名店を集めたグルメフェスや物産展、段ボール遊園地、ご当地アイドルのライブなど多彩なイベントがめじろ押しだった。さらに4月21日でナイター10周年を迎え、それを記念し、4月からはあらゆる世代が集える地域と連携したイベントを毎週行う予定にしている。

集客の成功は、地域住民とともに歩む公営競技が目指す到達点。中村きょうだいのように、丸亀ボートを支える存在もさらに出てくることだろう。児島が次々に強豪を輩出して「ボート王国」と呼ばれたように、丸亀が「王国」と呼ばれる日も近いと確信している。