この年末年始、絶え間なく流れてくるJリーグオフシーズン恒例の選手情報に目を凝らした。
契約を更新する者もいれば、移籍する者、契約満了で退団する者、はたまた現役引退する者まで。サッカー選手の大移動が続いた。
そこに添えられているコメントに注目している。「言葉」には、その選手の人柄や背景がよく表れていて興味深いからだ。
■J3福島からJFL移籍の上川琢
1月17日、目に留まったのはJ3福島ユナイテッドFCを退団し、日本フットボールリーグ(JFL)の東京武蔵野FCへの加入が決まったGK上川琢選手(24)の言葉だった。
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横河武蔵野フットボールクラブに関わる全ての皆様。
この度、福島ユナイテッドから加入することになりました、上川琢です。
自分が積み上げてきたものを発揮し、チームの勝利と更なる発展のために貢献していきます。
また、学生時代にはよく三鷹に遊びに来ていて、車の免許取得の際には、ユニフォームパートナーの武蔵境自動車教習所さんにお世話になりました。
馴染みのある土地で、また頑張っていきます!
応援のほどよろしくお願いします!(以上、原文のまま)
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「三鷹に遊びに来ていて」「車の免許取得の際にはお世話になりました」「馴染みのある土地で頑張っていきます」。自らの体験を絡めながらサポーター、ホームタウンへの思いを伝えていた。
クラブからリリースされた選手のコメントの多くは紋切り型であったり、無味乾燥なものが多いように感じている。それだけにファンの心を動かす文章だったのではと思う。
その上川選手には昨年夏、インタビューする機会があった。福島では公式戦の出場がなく、JFL昇格を目指す関東1部リーグの東京ユナイテッドFCへレンタル移籍してきた。そのデビュー戦後、東京・小石川で話を聞いた。
■父はW杯主審で活躍の上川徹さん
何より驚かされたのは、初対面の記者に対してのオープンマインドな姿勢だった。壁がない。屈託のない笑顔を向け、会話を楽しもうとしていた。そうなると、互いの言葉は止まらなくなり、内容も濃密なものになっていく。
サッカーの話はもちろん、プライベートなことまで。さらには2006年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で3位決定戦などの主審を務めた父・上川徹さんのことまで、幅広く聞かせてもらった。例えばこんな感じだった。
「普通のおっちゃんです。お酒も飲みますし、楽しい感じで。結構、親子で話します。大学生くらいから、いろいろ話するようになって。高校までは忙しくて、話す機会もなくて。お酒も一緒に飲むようになって。そういう形が自分もうれしいです。サッカーの話はあまりしないですね。たわいもない会話ができるのがうれしい。最近、在宅も増えたりして。それで、ちゃんと生活できているか? みたいな。やっぱり親ですね」
話せば話すほど親近感を覚え、親子ほど年齢の違う若者の話に引き込まれた。なぜ、これだけ初対面の人間と話が出来るのか? そう尋ねると、早稲田大学での学生生活についても語ってくれた。
「サッカーをやめた後も人生は続くので、早稲田にいて良かったな。そこで(様々な人の)考え方の違いを、いい意味で学べたし、自分の視野は広がりました。自分を持っている人間が早稲田には多い。しっかりした人間じゃないと部に入れない。言語化能力とか高いです」
■レンタル移籍が1週間ほどで終了
このインタビューの数日後、福島のGK陣に負傷者が相次ぎ、わずか1週間ほどでレンタルが終了。こんなことがあるのかと思うような急展開だった。風のように再びJ3の舞台へと舞い戻っていった。
だが2試合のベンチ入りしたに過ぎず、このオフ、2シーズンの在籍でJ3での公式戦ゼロという状況のまま契約満了。プロ選手だから仕方ないことと理解しつつ、傍目にはかわいそうな扱われ方に映った。
それでも、そういう思いは微塵も見せず、福島から退団する際(12月4日)にこんなコメントを出している。
「来年は、福島ユナイテッドFCのユニフォームを身にまといサッカーをすることができなくなりました。みなさまと笑顔で楽しく話せないと思うと悲しく、寂しい思いでいっぱいですが、このような結果になったのは自分の力不足だと感じています。スタジアムや十六沼でみなさまに元気をもらった分、プレーでチームの勝利に貢献したかったのですが、それが叶わずに申し訳ございません。
福島でプロサッカー選手としてのキャリアを歩み始め、自然豊かな土地、人の温かさ、おいしいお米や果物、農業部を通じて多くの農作業を経験できたことは、自分の財産です」
これは文章の一部を抜粋したまでだが、恨みつらみなど微塵もない。「このような結果になったのは自分の力不足」と自らにベクトルを向け、むしろ様々な環境を与えてくれたクラブや福島という地域への愛情、さらには挨拶もできずに離れることになった東京ユナイテッドFCへの感謝の言葉までつづられていた。
■人の心を動かす職業だからこそ
人から応援される選手とは?
シンプルな言い方をすれば、他者への配慮なのだと思う。競技力はもちろんプロ選手ゆえに必要だが、それ以上に「社会の一員」という当たり前の感覚が根底にあってほしい。人に見られ、人の心を動かす職業だからこそ、むしろそっちの方が大事だ。それは簡単なことではない。
J1を筆頭に日本サッカーも新シーズンに向けて動きだした。寒さ厳しい折だからこそ、心がほっこりするような言葉にもっと触れたい。【佐藤隆志】






