ワールドカップ(W杯)ロシア大会開幕を前に、日刊スポーツ評論家が西野ジャパンを斬る-。セルジオ越後氏(72)は、失うもののない日本は攻めて勝負しろと提言する。W杯全体の展望も含め、明日13日からは秋田豊氏(47)、永島昭浩氏(54)が続く。

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 日本はハリルホジッチ前監督から西野監督に代わっても、変わらなかった。選手選考の際に「ポリバレント」を強調したが、スイス戦で「本職」以外の位置でプレーした選手はいなかった。結局、監督ではなく、選手の質で負けた。そもそもFIFAランク61位の日本が同6位のスイスに敗れ、「悔しい」と言うのは生意気ではないか? もっと謙虚になってほしい。

 W杯1次リーグ初戦で対戦するコロンビアは、控えメンバー中心で「引き分け以上」が目標だった4年前とは違う。日本相手に確実に「勝ち点3」を取りにベストメンバーでくる。前半で勝負を決めにくる。ガーナ戦、スイス戦を見れば、守りを意識した日本は先取点を奪われると立て直しができない。日本の選手は自立心が足りないのか、指揮官に忠実なのか、選手だけで修正することなく、ハーフタイムまでは慌てたまま。柔軟性がない。

 2戦目のセネガルも、基本は「守って、カウンター攻撃」だが、日本相手には攻めてくる。3戦目のポーランドも1次リーグ突破がかかっていれば、勝ちにくる。日本は相手にとって確実に勝つべき相手なのだ。さらに得失点差を稼ぐ相手になる場面も。積極的に攻めてくるのが前提だ。

 日本は守り切れるだろうか? せっかくなら攻めて勝負しないか? 殴り合いにチャレンジしないか? 後悔しないために…。「負けないために守って、守り切れなかった」後悔より、「勝ちにいって、勝てなかった」後悔の方がいいのではないか? くしくも「マイアミの奇跡」が教えてくれた。守って守ってカウンターでブラジルに勝っても、1次リーグ突破はできなかった。当時のGK川口能活のプレーを、今の川島に求めることはできない。

 日本は30代が多い。若手中心なら別だが、今回が最後のW杯になる選手も多いからこそ、悔いのない集大成にしてみないか? FIFAランク61位だ。失うものはないだろう。

 ただ、勝つためには相手セットプレーへの対策が必要だ。1次リーグで対戦する3チームとも長身選手、直接FKを決められる選手がいる。日本はシステムについての議論が好きだが、これはあまり意味がないと思うな。3バックでも4バックでも、強い相手に守る時は両サイドが下がったり、ボランチがカバーに入ったり、結局5バックになってしまうのだ。

 W杯全体を展望すれば、ブラジルとドイツが優勝候補に挙げられ、どちらかが1次リーグで2位通過だと決勝トーナメント1回戦で直接対戦、片方が消える。両者1位通過なら決勝まで対戦しない。ここは鍵だ。一方でイタリア、オランダ、チリという強豪国が出場しないことでバランスが崩れ、サプライズが起こりそう。決勝トーナメントは何が起こるか、分からない。(日刊スポーツ評論家)