5月末から始まった日本代表の海外組合宿。特に休日の公開練習では、大勢のファンが駆けつけ、敷地内の駐車場は満車状態。報道陣も最寄り駅に車を止め、タクシー(運賃1540円)で向かうほどだった。運良く敷地内駐車場に入れた人も、練習後、出庫までに小一時間要する“出庫渋滞”に陥った。

 海外組の合宿では、ハリルホジッチ監督の計らいで、子供を対象にファンサービスが行われるときもある。5月31日の午後練習は、MF原口元気(26=ヘルタ)の1人だけだったが、指揮官の勧めで、原口は練習後、会場にいた子供たち全員に約20分にわたりサインに応じた。特に、合宿最終日は“サプライズ”なサービスが起こる場合がある。過去には子供たちが選手と記念撮影をしたこともあったが、今年は炎天下の中でのハイタッチ&サイン会だった。色紙を用意していない子供は、友だちにノートの切れ端をもらってサインをもらっていた。紙切れを差し出されても、嫌な顔をする選手は1人もいなかった。

 Jリーグでも、練習後にファンサービスを行うクラブは多い。川崎フロンターレもその1つ。休日には長蛇の列になるが、MF中村憲剛(36)ら全選手が、写真撮影やサインに快く応じている。昨季まで川崎フロンターレに在籍していたFW大久保嘉人(現FC東京)は、クラブハウスに返信封筒入りで届く「サインのお願い」にも不義理をすることはなかった。大久保は「返信封筒まで入れてくれているのに、返さなかったら罰があたる」と話していた。

 サッカー界のレジェンド、横浜FCのFWカズ(三浦知良)も神対応だ。室内で別メニューで練習している時も、外で待っているサポーターには必ずサインに応じていた。関西から旅行で横浜に来たあるファンは、3時間以上待ってカズに念願のサインをもらい、目を潤ませながら「待ってよかった」と喜んでいた。

 その一方で、決められた日のみにファンサービスを行うクラブも、J1、J2を含め複数ある。週末は試合のため、ファンサービスデーはほとんど平日だ。遠方から来るサポーターは、日程を合わせるのも大変だろう。「○○から来たので」と選手に直接、サインをねだろうとしても、スタッフから「今日はできない日なので」と事務的に断らり姿を見て、かわいそうになった。日本代表の指揮官も、子供の夢を応援すべく、選手と触れ合う機会を設けている。せめて子供が参加できる休日に「キッズデー」として、月に1回でもファンサービスを実施すべきではないのか。ファンサービスの在り方をあらためて考えさせられた代表合宿でもあった。【岩田千代巳】


 ◆岩田千代巳(いわた・ちよみ)1972年(昭47)、名古屋市生まれ。菊里高、お茶の水女子大を経て95年、入社。主に文化社会部で芸能、音楽を担当。11年11月、静岡支局に異動し初のスポーツの現場に。13年1月から(当時)J1磐田を担当。15年5月、スポーツ部に異動し主に川崎F、大宮担当。