浦和レッズGK西川周作(31)は、日本代表を離れて半年以上がたった。ハリルジャパンのGKは川島、中村、東口がそろうことが自然になった。かつてスタメンの座にもついていた西川はライバルの力を認めた。「今はあの3人がトップ3だと思う」。口にした敬意の言葉は、自身を戒めるような声色だった。

 国内組で臨んだ昨年12月の東アジアE-1選手権はクラブW杯出場のため参加できなかった。それもあり、昨年6月から代表に招集されていない。今季は序盤からチームで結果が出ず、結果的に2度の監督交代があった中で懸命なプレーを続けている。W杯によるリーグ中断までの15連戦を「これがラストチャンス」と心にし、4月を終えた。「チームの結果が最優先なので。とにかくそこを考えている。その先に代表や、W杯がある」。開幕5戦勝ちなしだったチームは前節5月2日に昨季王者の川崎Fに完封勝ちした。

 大分ユースでプレーしていた頃までは「夢の世界だった」と話す大舞台のピッチには少しずつ前進してきた。直前で代表漏れした10年南アフリカ大会。実際に参加したが、ピッチに立つことはなかった14年ブラジル大会。「実際に戦った人にしか分からない難しさや雰囲気があった。ベンチですらそういうものを感じた。ロシアではベンチよりピッチの中で、という思いが強くなった」。近づけば近づくほど、W杯が持つ目に見えない力に引き込まれた。

 残るアピールの機会はわずかとなったが、西川の視線がぶれることはない。「試合に負けることだってある。でも負け方にもいろいろありますから。同じ1失点にしても、中身を追求していきたいし。少しずつでも、自分の不可能を可能にしていきたい。できるだけ。可能性をね」。失点を減らすという、シンプルなようでゴールのない課題。GKの本質を極めることが夢の舞台へ続く道だと信じ、突き進む。【岡崎悠利】

 ◆岡崎悠利(おかざき・ゆうり)1991年(平3)4月30日、茨城県つくば市生まれ。青学大から14年に入社。16年秋までラグビーとバレーボールを取材し、現在はサッカーで主に浦和、東京V、年代別日本代表を担当。