巧みなパスワークを武器に全国高校サッカー選手権で2大会連続4強入りを果たしている新潟・帝京長岡が、全国初制覇に向け、主戦場としている高円宮杯U-18プリンスリーグ北信越でアップデートする。3日、第10節で北越(新潟)と対戦。2年生司令塔のMF広井蘭人(らんど)やFW起用となったDF三宅凌太郎主将(3年)の得点で3-1で勝利し、2試合未消化ながら勝ち点を15に伸ばして暫定3位に浮上した。

気温30度を超える暑さの中、帝京長岡は得意とする狭いエリアでのコンビネーションに加え、全選手が90分間動き続ける運動量を発揮。試合時間残り20分を切っても、負けている側のチームかのように前線からのハイプレスと波状攻撃を繰り返し、完全に相手をのみ込んだ。

この試合で攻撃をけん引したのは、前年度の全国選手権を経験した広井と三宅の2人。6月19日~23日に行われたU-17日本代表候補合宿(千葉)で、元日本代表MF中村憲剛ロールモデルコーチからパスを引き出す位置やタイミングの大切さを直々に伝授されたという広井は、正確な左足パスを広角に散らすだけでなく果敢にゴール前に顔を出し、チャンスを作り続けた。「憲剛コーチの助言を受け、前を向く意識が変わった。今日の得点にもつながった」と手応えを実感する。

一方の三宅は背番号3を背負うセンターバックだが、ここ最近はシュートセンスを評価されFWの位置に入る。小学生以来というポジションだが、前への推進力と思い切りの良さを生かしたプレーで存在感を示し、この日1得点2アシスト。今リーグ戦4点目とし、得点王も射程圏内だ。昨年は2年生ながら副主将を務め、全国選手権を勝ち抜く醍醐味(だいごみ)や厳しさを実感した。「少ないチャンスを生かせるチームが上へいける」と、一発で勝負をつけられるFWを目指している。

チームは今リーグ戦や、準決勝で敗退となった県総体ではメンバーを固定せずに戦いを続けている。部員は約150人。全選手に出場チャンスがあるだけに、ポジション争いは激化している。現チーム始動初日となった1月25日。まだ雪が残るピッチで古沢監督は「もう3位はいらない。日本一を取ろう」と選手と約束をした。あれから約5カ月半。全部員が自らに高い目標を設定し、日々のトレーニングに励んでいる。

絶妙なパス交換で得点を目指す帝京長岡スタイルは貫きながらも、時には泥臭く、獣のようにボールを奪い、ゴールを目指す。チームは昨年の全国選手権を経験した選手が多く残るが、慢心はない。三宅と広井はともに「選手権県大会が始まるまで時間がない。この夏が勝負。全員でもっとレベルアップする」と声をそろえる。プレミアリーグ昇格は狙うが、最大の目標は全国選手権初制覇。県勢初の偉業達成へ向け、帝京長岡は全選手が目をギラつかせながら、この夏場でさらなる進化を遂げる。【小林忠】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆小林忠(こばやし・ただし)1985年(昭60)6月26日、新潟県阿賀野市(水原町)生まれ。水原サッカー少年団で競技を始め、北越高2年時に全国高校選手権出場。保育教諭として阿賀野市内のこども園に12年半勤務した後、19年途中に入社。20年からJ2新潟担当。

前年度の全国選手権ではDFとして全試合に出場したが、最近はFWで起用される三宅(右)
前年度の全国選手権ではDFとして全試合に出場したが、最近はFWで起用される三宅(右)