短くて、分かりやすい。キャッチーなフレーズは、チームを1つにまとめる大きな役割を果たすと思う。

「A代表経由パリ五輪」

サッカーU-21日本代表を率いる大岩剛監督(49)が、24年パリオリンピック(五輪)を目指すこの世代へ、かねて言い続けている言葉だ。

アンダー世代で経験を積んでからA代表にステップアップするのではなく、A代表に入りながらパリ五輪にも出場する。かつては反対に「五輪経由W杯」のように、主流だったが流れは変わりつつあるようだ。昨年の東京五輪では、MF久保建英(20)がA代表でもプレーしながら出場した。

昨年12月に大岩監督が就任してから、3月の国内候補合宿が初めての代表活動。今月末のドバイカップは初の海外遠征だった。

「A代表経由パリ五輪」。1カ月弱の間に、選手からのこの言葉を、何度も耳にした。おそらく、大岩監督がミーティングなどで口にしてきたのだろう。この言葉はもう選手たちの心に染みつき、全員を1つの目標に向かわせている。

パリ五輪を目指す世代には、高いポテンシャルを持つ逸材がそろっている。Jリーグ開幕から2戦連続ゴールを決めたMF鈴木唯人(20=清水)、開幕スタメンを勝ち取り活躍を続けるMF松木玖生(18=東京)。ドバイカップでは、同じく18歳のMF甲田英将(18=名古屋)がドリブルで相手を翻弄(ほんろう)し、MF山本理仁(20=東京V)は冷静にゲームをコントロールした。それぞれの選手が自分だけの持ち味を発揮していた。

もう1つ、選手たちが口をそろえる言葉がある。大岩監督が「熱い」人だということ。「A代表経由パリ五輪」。短くて、分かりやすい言葉と、指揮官の熱量。始まったばかりの長い道のりの中で、これからも選手たちをより高いモチベーションへ導いていくはずだ。【磯綾乃】