日本代表が7大会連続のワールドカップ(W杯)出場を決めたオーストラリア・シドニー。試合後のスタジアムで、DF吉田麻也主将(33=サンプドリア)から、最終予選突破を記念するTシャツを手渡された日本人がいた。元日本代表で、J1鹿島アントラーズなどで活躍した田代有三さん(39)だった。

田代さんは現在、12歳までの子どもを対象として、シドニーでサッカースクール「MATE FC」を20年から運営している。所属する子どもたちのほとんどは現地在住の日本人。日本代表がトレーニングを行った際には約150人の子どもたちとともに見学に訪れ、選手との記念撮影も行われた。

オーストラリアでの永住権を持っている。17年にオーストラリアの2部に相当するウーロンゴンに加入し、18年に引退。そこから約1カ月後に取得した。一般的に取得は簡単ではないが、日本代表やJリーグなどでの実績が認められ、タレントビザというカテゴリーでの取得が認定された。海外で活動を続けたいという希望がかなったことに「サッカーでの実績があったおかげ。日本サッカー界には本当に感謝しています」と話す。

世界に影響したコロナ禍も、シドニーで経験した。外出に厳しい制限がかかった時期もあり、スクールの活動も思うように展開できない時間が続いたという。日本代表が活動した3月の時点では街中でマスクをする人はほぼいなかったが「少し前まではマスクを着けていないと罰金規則があった。緩和と同時に規制疲れもあったようで、一気に変わりました」と現地の様子も語った。

指導している子どもたちは、日本代表に大きな憧れを持っているという。現在ではヨーロッパのビッグクラブでプレーする選手も出てきて、欧州チャンピオンズリーグなどクラブでの大規模な大会にも注目が集まるようになった。そんな中でも「日本代表にしか興味がないというくらいです」と笑う。

駐在などさまざまな家庭があり、帰国のためクラブを離れる子もたくさんいる。今回はどうしても日本代表が見たくて、帰国日にもかかわらずフライトに間に合うぎりぎりの時間までトレーニングを見学した子もいた。

W杯を決めたオーストラリア戦はナイター開催だったが、教え子の多くがスタジアムに足を運んだという。「記憶に残る試合になったと思います」。憧れの日本代表が勝つ姿を目に焼き付ける子どもたちの夢中な表情を、うれしそうに見守った。【岡崎悠利】

日本対オーストラリア 試合後、握手を交わす田代有三氏(右)と吉田(2022年3月24日撮影)
日本対オーストラリア 試合後、握手を交わす田代有三氏(右)と吉田(2022年3月24日撮影)