最近のJ1アビスパ福岡は、攻守の空回りが気がかりだ。

リーグ前半戦最後の6月18日清水エスパルス戦で、強みである堅守からのカウンターが不発に終わり、1-3の完敗を喫した。今季ワースト失点に加えて、先制された試合は6戦全敗となった。

しかも、福岡は12位ながら、J2降格圏の16位清水、17位湘南ベルマーレとは勝ち点3差に縮められ、残留争いに巻き込まれそうな危機感さえ漂い始めた。

リーグ最少失点の堅守は、伝統的に福岡の生命線だ。だが、清水戦は、長谷部茂利監督(51)が「(1点目は)ミスから自分たちで招いた失点。まだまだ力がない」と嘆いた守備崩壊で自滅した。それでも、大敗から一夜明けた6月19日、就任3年目の指揮官は「(失点は)対応できる範囲だったので、やるべきことをしっかりやれば防げる」と前を向いた。

ただ、懸念は鹿島アントラーズに負けた6月11日ルヴァン杯から清水戦にかけて2戦連続で守備のほころびが目立って、連敗したことだ。

特に、新監督初陣だった清水には、攻守の新システムでかく乱され、後手に回った。長谷部監督は「予測が難しかった」といい、相手の「変化」に苦戦する課題も露呈してしまった。

当然、自慢の守備でリズムをつくれなければ、リーグワーストの得点力、17試合中11試合が無得点だった攻撃で、打開できるはずもない。

昨季は17試合を終えた時点で、8勝4分け5敗(21得点18失点)で勝ち点29の5位と健闘した。だが、今季は相手に研究されたこともあり、17試合4勝7分け6敗(12得点13失点)の勝ち点19と苦しむ。

失点への意識はより整備されたが、一方で、1発のカウンター頼みのため、得点欠乏症は深刻だ。

試合を見ていると、強みのサイド攻撃からのクロスは、相手に読まれて不発が多い。昨季J2得点王で鳴り物入りの加入だったFWルキアン(30)は孤立が目立ち、ここまで2得点と精彩を欠く。昨季まで得点源だったセットプレーも精度が低い。

後半戦のスタートとなる6月25日の次節は、前回0-1で敗れた好調のサンフレッチェ広島戦。福岡は、最近5試合1勝1分け3敗と失速気味の体勢を立て直せるか。早くも正念場だ。

「勝ち点を取れるのがいい監督」の理念を持つ長谷部監督の采配はいかに。今後を占うと言っても過言ではない、後半戦スタートの広島戦を注視したい。【菊川光一】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市博多区生まれ。福岡大大濠-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在、報道部。Jリーグやアマ野球などを担当。スポーツ歴は野球、陸上中長距離。170センチ、61キロ。血液型A。