サッカー日本代表は、当初予定された国際親善試合チリ戦が中止となった7日、札幌市で紅白戦を行った。6日未明に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震の被災者に無料公開し、電気、水などライフラインが復旧していない中でも約200人の地元サポーターが駆けつけた。両チームとも4バックで臨み、激しい球際と速い攻守の切り替えで「戦う姿勢」を発揮。最後はDF槙野のアイデアでサポーターと集合写真を撮り、感謝の気持ちを表現した。チームは今日8日、札幌をたち、コスタリカ戦が行われる大阪へ向かう。

森保監督の粋な計らいだった。日本代表の紅白戦は基本的に非公開だが、この日は被災地のサポーターのために公開。そして森保監督の代名詞「3バック」ではなくA代表の“初陣”は4バックだった。チリ戦で右サイドバック先発が濃厚だったDF遠藤が1本目でボランチに入るなど、試合形式で、異なるポジションで考えるサッカーを実戦させるのも森保流だ。指揮官はベンチから「戻れ! 戻れ!」など、自身のサッカーの根幹である「激しい球際」「速い攻守の切り替え」を植え付けた。当初は35分×2本の予定だったが、日没のため2本目は20分で終了した。

被災地は停電の地域が残り、水が出ない集合住宅も多く残っている。その中でも駆けつけた地元ファンのために、観客席を開放して紅白戦を行った。幸い、日本代表の宿舎は地震発生から5時間後に電気が復旧し、翌日から日常の生活を送ることができている。だからこそ、指揮官はミーティングで、サッカーができる環境と、それを支えてくれる人々へ感謝の気持ちを持つことをあらためて選手に伝え続けてきた。

イレブンは被災地のファンの前で、試合さながらに戦う姿勢を届けた。初代主将に就任したMF青山は「自分たちが何か伝えられるものを持ってるからこそ、こんな大変なときにも見に来てくれたと思う」と日本代表選手としての責任を口にし「歩いているヤツは1人もいなかった。みんなの気持ちがこもっていた。みんながその思いを持ちながらプレーできたし、レベルが高い練習になったと思う」と振り返った。

練習試合後には、槙野のアイデアでサポーターと記念撮影。槙野はサッカーができている状況を「奇跡」と表現し「触れ合う時間の中で一言二言話す中で、1歩踏み出す勇気を持ってもらえるようなきっかけを作っていければと、ああいう行動を取らせてもらいました」と被災者を気遣った。森保ジャパンは、きょう8日に初陣となるコスタリカと戦うために大阪へ出発する。【岩田千代巳】