サッカー南米選手権(ブラジル)が14日(日本時間15日)に開幕する。森保ジャパンは20年東京オリンピック(五輪)を見据えた強化の機会とし、代表23人中、五輪世代を18人招集した。

17日(同18日)の初戦チリ戦へ向け、注目の7選手を「TOKYO2020へ輝く男たち」と題し、それぞれの武器を紹介する。第1回はMF久保建英(18=東京)。いまやJ1を代表する存在となった男の真骨頂は“逆算力”にある。

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どうすれば得点につながるか。18歳の思考はここから始まる。常に自身と味方、相手の立ち位置を確かめながら、ゴールへの可能性を最大限に高めるプレーを選択、遂行できる。その「逆算力」が、久保の最大の魅力といえる。

得意のドリブルについて「ファーストチョイス」という言葉を使う。相手にとって「怖い存在になりたいから」だ。ただその“第1候補”をスパッと捨てられることも長所の1つ。3月30日の浦和戦では切り込むスペースが目の前にあったが、前線のFWディエゴ・オリヴェイラに絶妙なスルーパスを送った。ドリブルを期待する周囲に対して「人よりもボールが動く方が速い」とあっさり。目的はDFを1人かわすことではなく、ゴールにたどり着くこと。すべてのプレーに整然とした根拠がある。

バルセロナに移籍する前の川崎F下部組織時代から「気づき」の才能は飛び抜けていた。当時、指導した高崎コーチは「発想力が本当に豊かだった」と振り返る。ある日の練習では、20メートル先にゴールを設定し、途中に5つのゲートをジグザグに配置。だれが最速でゴールできるか競わせた。周囲が懸命にドリブルでゲートを通過しようとする中、久保は1人、ボールをゴールへ向かって大きく蹴り飛ばし、走ってあっさりゲートを通過した。「たしかに『ドリブルでゲートを通過しろ』とは言わなかったんですよね」と高崎コーチ。苦笑いするしかなかった。

サッカーはゴールを目指すスポーツ。そんな当たり前すぎることを、久保にあらためて気づかされる。一方で、サッカー王国ブラジルに集まる南米勢のプレーは遊び心にあふれたものも多い。同じピッチで多くを吸収しながら、強豪を驚かせる。【岡崎悠利】

◆久保建英(くぼ・たけふさ)2001年(平13)6月4日、川崎市生まれ。2歳でサッカーを始め、11年9月に川崎FのU-10からバルセロナの下部組織カンテラへ。世代別代表はバルセロナ時代のU-15インドネシア遠征で初招集。中学2年の15年5月に東京U-15むさしに加入し、17年5月に15歳でU-20W杯に出場。同年9月に16歳でトップ昇格。横浜に期限付き移籍中の昨年8月の神戸戦でJ1初得点。今季は東京で開幕からスタメンを勝ち取り、14節を終えて13試合4得点。173センチ、67キロ。利き足は左。