サッカー元女子日本代表FW大野忍(36)が5日、現役引退を正式発表した。自身のSNSのほか、昨年12月まで所属していたノジマステラ神奈川相模原も同日に発表した。

なでしこジャパンの一員として11年女子W杯ドイツ大会優勝や12年ロンドン五輪銀メダル獲得などに貢献した。12日に記者会見する。

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「やっぱりコーンでしょ。これ最高。なんでもマヨネーズをかけるとうまい」。11年女子W杯ドイツ大会優勝直後、大野忍は口いっぱいにほおばった。元日本代表FW釜本邦茂氏の全面協力を得て実現した日刊スポーツの紙面企画「邦茂の部屋」として高級すし祝勝会を開いた。マグロ、うに、いくらなど高級食材が並んでも、自分の好みを貫き通す庶民派ストライカー。仲間との食事も、すしチェーン店で「コーン」を大量注文する。

料理以外は、何でも出来るはずだった。だが、13年にリヨン(フランス)に移籍も、孤独に耐えられず帰国。同年のアーセナル(イングランド)移籍は母登美子さんに懇願し、一緒に渡英。家族や仲間と楽しく過ごすことがサッカーへのモチベーション。孤立を嫌うのも、パスがこなければ得点できないFWらしい。

1度だけ「どんな男性がタイプなの?」と聞いたこともある。「えっ、そんなこと聞く?」。顔を赤くした。「お父さんみたいな人かな…」。幼少期からサッカーを教えてくれた父光夫さんのような包み込んでくれる優しさも、ひそかに求めてはいる。「自分は教えるのうまくないですけれど、サッカーをやめても、小さい子たちとボール蹴ったりしたいですよね」と将来の夢も明かしたこともある。

国内リーグ最多182ゴールの記録保持者。掃除、気配り、愛嬌(あいきょう)も、なでしこトップクラスだ。【元なでしこジャパン担当・鎌田直秀】