ワールドカップ(W杯)カタール大会のアジア最終予選B組3位の日本は、16日(日本時間17日未明)にアウェーで4位オマーンと対戦する。

DF冨安健洋(23=アーセナル)が13日、マスカットからオンライン取材に対応し、勝利を誓った。9月2日の最終予選初戦、ホームでのオマーン戦は自身の移籍事情で不在だった。チームは0-1で敗れ、まさかの黒星スタートとなった。この1敗が響き7大会連続の本大会出場へ、厳しい状況が続く。因縁の相手とのリベンジマッチで求められるのは、勝ち点3のみ。新天地で大きく成長したセンターバック(CB)が“日本に冨安あり”を体現し、勝利へと導く。

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不在だった屈辱の日から2カ月。冨安の環境は大きく変わった。ボローニャからアーセナルへ。67年ぶりの開幕3連敗と、最悪のスタートを切った名門は、冨安加入後リーグでは8戦無敗、カップ戦を含めると公式戦は10戦負けなし。冨安もレギュラーを奪い、欠かせない存在となっている。「毎試合プレッシャーの中でプレーができている。いいプレーをしたらスタジアムも沸く。逆にネガティブなプレーをすると良くない反応が起きる」と語る。

森保監督が新天地へ送り出してくれた。夏の移籍期間の最終日に、アーセナル移籍が成立した。代表活動より、名門移籍を優先させるという指揮官の判断で、9月2日のオマーン戦は不在だった。ただ、チームは0-1で敗れた。まさかの最終予選黒星スタート。あの時、指揮官が移籍を“後押し”してくれたから、今の「アーセナル冨安」があるともいえる。「前回いなかったこともありますし」。短い言葉に、今回の試合にかける思いが集約されていた。

不在だった前回のまさかの敗北を考えた。「たまたま負けたわけではないと感じました」。相手は、日本対策を練りチーム全体に、戦術が浸透していると分析。その上で、サイドバックからの攻撃が鍵となるとみる。ベトナム戦での反省も生かし、サイドチェンジの有効活用もポイントに挙げた。「オマーンは力があることは分かっている」と慢心もない。

プレミアで対峙(たいじ)する相手は、今回の相手とは比べものにならない。9月26日にはトットナムと対戦し、右サイドバックとして韓国代表FW孫興民とマッチアップした。1対1でも圧倒。「毎試合、世界的に有名なプレーヤーと対戦する。所属チームで結果を出さない限り、代表には来られない」。超一線級の選手との真剣勝負で、自信も揺るがないものとなってきた。「後ろがゼロに抑えることで、チームを安定させられるようにやっていきたい」。勝利が絶対条件の一戦。今回は「アーセナル冨安」がいる。勝利で、存在意義を証明する。【栗田尚樹】

 

◆森保監督の決断について 10月6日に、吉田主将が取材に応じ、「いろんな監督とやってきたけど、本気で選手のことを考えてくれた、数少ない1人が森保監督。“みこしを担ぎたい”と思う監督であることは間違いない」と指揮官への思いをぶちまけた。理由の1つとして、オマーン戦に冨安の招集を見送ったことを挙げ「最終予選の大事な試合で、レギュラー選手の個人キャリアを重視して1試合スキップさせたのは、監督の立場でなかなかできる決断じゃないと思う」「ここまで選手ファーストで考えてくれる人はいないんじゃないか」と述べた。一方で、もしW杯本大会出場を逃すようなことがあれば、9月のあの決断が、1つの大きなポイントとなる可能性もはらんでいる。