森保ジャパンが敵地でオーストラリアと対戦する。キックオフは日本時間午後6時10分。

最終予選は残り2試合で日本B組2位につけている。この試合に勝てば、7大会連続となるW杯出場が決まる。アジア最終予選はA、B両組の2位までが自動的にW杯に出場できる。

ただ、日本はオーストラリアに敗れるとB組3位に転落し、大ピンチに陥る。

勝てば天国、負ければ地獄という注目の大一番。テレビは放送権の高騰で、今回の最終予選の敵地、アウェーでの試合は地上波テレビでの放送はない。今回も独占放送として、有料配信のDAZN(ダゾーン)で視聴となる。

最終予選の日本のアウェーでの試合が、地上波から消えたのは昨年8月。映像配信サービスのDAZNがアジア・サッカー連盟(AFC)との間で、2028年までの長期契約に合意したと発表した。

同じタイミングで、テレビ朝日はホーム5試合のみ地上波独占生中継すると発表したが、W杯出場決定の可能性がある試合はアウェーで巡ってきた。DAZNの独り勝ちといえる状況が予想される。

DAZNと日本代表戦の関係は浅い。19年の南米選手権を初めて配信。この時は、NHKと在京キー局が代理店を通じて南米連盟と交渉したが、1次リーグ3試合が日本時間の午前8時開始で、朝の情報番組と重なるため地上波は撤退。BS放送も検討されたが、高額な放送権料に対応できなかった。地上波で中継されないのは10年1月6日のアジア杯予選イエメン戦(サヌア)以来、9年半ぶりの出来事だった。

これは、AFCと放映権契約を結んでいたテレビ朝日の新たな契約締結がならなかったことが発端。価格が急騰した。これまでの流れを、長くサッカーを取材するサッカー担当の盧載鎭記者が解説する。

    ◇    ◇    ◇

解説 それまでテレビ放映権はホームの国が持っていた。しかし放映権がビジネスになると判断したAFCは、2005年からその権利を売り始めた。市場の大きい日本、韓国、中国がホームの放映権を主張して反対したが、他の40国以上のアジアの加盟国と地域は、AFCから最終予選のホーム補助金を3000万円出すとの提案をのんだ。

当時、地上波放映権をテレビ朝日が4年契約の90億円で買った。これにより、06年W杯ドイツ大会の予選からホームもアウェーも最終予選はテレ朝が地上波で独占して放送するようになった。4年契約は4度更新され、17年には4年180億円で契約を結んだ。しかしその契約が一昨年で切れると、AFCが契約期間を8年と2倍にし、金額も1年換算で5倍以上となる2000億円に設定したことで、新たな契約は頓挫した。

結局、資金力のあるDAZNが、全放映権を獲得した。しかしテレ朝は意地とプライドを示し、今回、ホームの5試合を地上波で放送。これはテレ朝とDAZNが結んだばら売り契約とみられ、1試合3億~5億円で獲得したようだ。

しかし、なぜアウェー戦は契約できなかったのか。テレビ局は、莫大(ばくだい)な放映権料を支払う代わりに、キックオフ時間などで希望を伝えることができる。ホームなら、より視聴率の見込めるゴールデンタイムで放送できるため、CMが高く売れる。しかしアウェーは時差の関係で、キックオフが日本時間の深夜や早朝に設定されることが多いなど、CMが売れたとしても採算が合わなくなる。そのため、1試合3億円以上の巨額を払うのは難しくなった。時差のほとんどないオーストラリア戦だけは違ったのだが…。

W杯最終予選とアジア杯はテレビではなく、パソコンやスマホで見る時代へと変わった。本大会こそ、ABEMAが全64試合を無料で生放送することになったが、ABEMAもインターネットテレビ局。このカタール大会は、中継の上でも、日本サッカーの大きなターニングポイントだといえるだろう。(金額は推定)【盧載鎭】