J1の横浜F・マリノスは29日、日本代表として東アジアE-1選手権に参加していたFW宮市亮(29)が右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂したと発表した。27日の韓国戦(3○0)に途中出場し、負傷交代していた。近日中に手術を受けるが、全治については明らかになっていない。宮市は両膝の前十字靱帯断裂などの度重なる大けがを乗り越え、10年ぶりに日本代表に選出。W杯カタール大会(11月21日開幕)出場を目指していた中、再び大きな試練に直面した。

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◆靱帯(じんたい)断裂とは 青森整形外科クリニックの荒木徳一医師(64)によると、膝が内側へねじれる動きによって起きるもので「断裂しても、歩行などはできる」と説明する。日常生活には問題がないことが多いため、以前は中高年の人が断裂した際は手術を行わないことも少なくなかった。しかし靱帯を失うと軟骨への負担が増え、変形性膝関節症などのリスクが高まる。現在は手術を行うことが主流になった。

ただ、宮市の例にあるようなトップアスリートが競技レベルを維持することを目標とした場合には、話は変わってくる。手術では筋肉が健になっていく部分をつなぎ合わせるが、失われた靱帯が完全に元に戻ることはない。靱帯には、体が傾いたときなどに姿勢を正常に戻そうとするセンサーがあるとも考えられており、そうした機能を復活させることは現状できない。

切れてしまうと完治は難しい。荒木医師は「現在は予防に着眼点を置いて研究が進められている」と話す。米国をはじめ、国内でも弘前大学が先駆けとなり、運動を通した実験や患者の追跡調査などでデータを蓄積している。ただ現時点では明確な答えは出ていないという。多くのアスリートが負傷に悩む靱帯は、医学的にもデリケートな問題となっている。