「守り勝つ」。このワードが日本のサッカー文化になりつつあることが、残念で仕方ない。先制した後も、後半45分間も普通に攻めればいいのに、日本はラインを下げて守りに徹した。守備に人数を割き、3バックはいつの間にか5バックになっていた。しかも前線に人がいなくて、相手DFラインはプレッシャーなしで前線に良質なボールを放り込む。そこでDF陣の対応が少しでもずれたらビッグチャンスを与えてしまう。相手のシュートミスに3度は助けられたな。

昨年のW杯カタール大会を思い出す。日本は守って守って少ないチャンスをものにして強国相手に勝利をつかんだ。W杯で強い相手に守りを固めることは、仕方のない選択かもしれない。しかしこの日の相手、セネガルは、日本と実力互角のチーム。イーブンな相手にも守りに徹する戦略でしか戦えないことは、寂しすぎる。

FW熊田1人を残して10人が下がっていた。2列目からの押し上げもない。そのため、熊田が前線で孤立し、すぐにボールを失ってしまった。速いパス回しや連係のアイデア、2列目からの抜け出し、MF松木ら正確なキッカー、体格の良い選手がいるなど、日本の良さは数え切れない。初戦の緊張なのか。早い段階で得点して守りの意識が急に高まったのか。指揮官が弱気になったのか。70分以上も長所を自ら消してしまった。

この組では実力で抜けている日本とセネガル。直接対決で勝ち点3を取ったことは良かった。しかも負け試合を拾ったわけだから、勝ち点6を取ったくらいの価値に値する。残る2戦。「いい守りからいい攻撃」という言葉は忘れて、圧倒的な攻めで、自信をつけて決勝トーナメントに進んで、どんどん上を目指してほしいね。(日刊スポーツ評論家)