日本代表のエースFWが前代未聞の形でチームを外れた。岡田武史監督(51)は29日、不振のFW高原直泰(28)の離脱を自ら発表。前日にメンバーを発表したが、それ以前に話し合って決めていたという。高原は岡田ジャパンでは無得点で、途中出場した27日のパラグアイ戦でも精彩を欠いていた。オマーン、タイとのW杯アジア3次予選3試合には帯同しない予定。外す予定の主力選手を招集するという過去に例がない事態。この日再集合した日本代表は、勝負の6月に向け波乱のスタートとなった。

 普段は練習後にしか報道陣に対応しない岡田監督が突然、合宿初日の練習前に会見を開いた。横浜市内の宿舎で「高原は合流しません」と結論から口にした。代表25人を発表してから約24時間後、エースに期待していた高原を離脱させるという衝撃の内容だった。

 岡田監督

 本来の状態に戻すために話し合って、何が一番いいかを…。代表に来てもチャンスは少ない、練習は少なくなる。所属先でコンディションを戻した方がいいだろうと、僕から持ち出した。

 岡田監督によると、2人は27日のパラグアイ戦後と、28日の代表発表前に2度、話し合って結論を出した。その中で「自信を持った時に戻ってきてほしい。我々は忍耐強く待つ。代表には(高原の復活が)どうしても必要」との言葉を続け、高原も「そうしてもらえるならありがたいです」と同意した。

 1月の鹿児島合宿から常に高原に気を配ってきたが、状態は上向かない。岡田ジャパンでは無得点で、リーグ戦でも今季2得点にとどまっている。パラグアイ戦でもペナルティーエリア内でトラップミスして好機を逸した。

 故障者を代表から外すのは当然だが、故障していない選手を事前に「外す」と決めておきながら、代表に選んだ上で「離脱」させるのは前代未聞。この理由を「あくまでも我々の一員であり、待っているとのメッセージです」と岡田監督は説明した。ほかの選手を追加招集せずにエースの復活を待つ特別待遇だ。

 中村俊ら欧州組が合流し、ようやく完全な形が見えたかと思えた岡田ジャパン。しかも高原は代表での通算23得点中5得点を中村俊のアシストで挙げるなど、相性も抜群だった。絶対に負けられないアジア3次予選に向け、不安な滑り出しとなったことは間違いない。