松田さんのためにも、立ち上がろう-。日本代表FW本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が8日、4日に急逝した元日本代表DF松田直樹さん(享年34)に哀悼の意を示し、同時にショックに沈む日本サッカー界に本田流のメッセージを発した。10日に韓国と国際親善試合を戦う同代表に合流するためこの日、札幌・新千歳空港に到着、初日の練習に合流した。同空港では遺志を継ぎ、前に進むことの大切さを口にした。

 白のスーツをまとった本田の口から言葉があふれた。心が震えたのだろう。当初、2日後の韓国戦については「しゃべりたくないんで」と完全に戦闘モードだったのが一変。松田さんについての質問でスイッチが入った。

 本田

 残された家族のことを思うと…。まだまだやり遂げたかったことはたくさんあると思うし、残念。でも、本人の遺志を受け継ぐというまわりの(選手の)コメントを目にしたり、聞いたりしている。ある意味、終わりじゃなくて始まりという死にしないといけない。おこがましい話だけどそう思う。マイナス面だけにしては、いけないんじゃないかと。

 故人と深いつながりはない。だからといって、ありふれた追悼コメントで終わらせなかった。サッカー人として、同じ日の丸を背負って戦う共通項がある。わが道を行く本田は自分の胸の内に問いかけた。わき上がる気持ちを言葉にした。まるで「死生観」を語るように重い言葉で、死という事実と向き合った。

 松田さんが亡くなりサッカー界が受けたショックは計り知れない。それでも、事実を乗り越え立ち上がろう-。希代のDFの遺志を継ぐ者たちで日本をよりたくましく強いものに-。本田の真意は、サッカー界へのメッセージに聞こえた。

 初日の練習は、松田さんへの黙とうから始まった。

 本田

 当然ボクらは日韓W杯も見てましたし、影響も受けている。今、ここにいるのも松田さんたちの活躍があったから。そういう気持ちを持っている。

 9月にはW杯3次予選が始まる。明日10日の韓国戦は貴重な最終テストの場。「つねに勝ちにこだわってやってますけど、内容は今までの親善試合とは変わってくる。ゴール前でどれだけクオリティーの差を見せられるか」。当然、結果も内容も突き詰める。

 “松田さんのために頑張る”や“ともに戦う”-のフレーズは頑として使わなかった。それでも、ショックから立ち上がる日本をけん引するのもこの男の仕事だ。メッセージは発した。あとはピッチでそれ以上のものを示す。それが本田流だ。【八反誠】