沢の後継者が金メダルへチームをけん引する。日本で初開催されるU-20(20歳以下)女子W杯が今日19日、開幕する。1次リーグ初戦でメキシコと対戦する「ヤングなでしこ」ことU-20女子日本代表のキーマンはMF猶本(なおもと)光(18=浦和)。なでしこジャパンの沢穂希と同じボランチで、高い技術とパスセンスで攻撃の起点になる。18日は試合会場の宮城スタジアムで前日練習を行い、気を引き締めた。

 いつもの愛くるしい笑顔が、少しぎこちなかった。前日練習を終えた猶本のほおが、少し赤らんでいた。「緊張か、楽しみか、不安か、プレッシャーなのかわかりません。今までにはない、フワフワしている感じ」。期待と重圧の入り交じる、大舞台を前にした心境を素直に吐露した。

 10年のU-17W杯で準優勝した実績はあるが、今回は状況がまるで異なる。なでしこジャパンが昨年のW杯で優勝し、女子サッカーの注目度が急上昇。12日に閉幕したロンドン五輪でも銀メダルを獲得し、さらに人気が沸騰した。その強い追い風を受けて、今大会はゴールデンタイムでテレビ中継され、1次リーグ第3戦スイス戦以降は東京・国立競技場が試合会場になる。「なでしこジャパンのメダルは刺激になった。プレッシャーでもあるけど、その中でもできるようにならないと」と冷静に言った。

 今年2月、女子の全世代の代表を対象にした和歌山合宿では、同世代のFW京川とともに飛び級で、なでしこジャパンの練習試合に出場した。そこで視野の広い展開力や、ボールをキープしてから前を向いてパスを配給する、センスの光るプレーを披露。当時、めまいで合宿参加を見送った、MF沢の後継者として一気にアピールした。

 その和歌山合宿で佐々木監督から「1対1にもっと強くなるといい」と直接アドバイスされた。今年4月から通う筑波大で、体幹とウエートトレーニングを開始。体重も増えていたという。13日のカナダとの壮行試合で「全然やれると手応えがつかめた」と自信もつけた。

 ロンドン五輪では、映像を通じて“お姉さん”から学んだ。2日の今大会の代表選出時に「同じポジションの沢選手や阪口選手のプレーに注目して見ている。沢選手みたいに積極的に攻撃に参加したり、阪口選手のようにしっかり守備をしながら、ボール回しの中心になりたい」。尊敬するお手本からプレーを吸収した。

 そのカナダ戦でセンターバックで先発したMF村松が、直前合宿の練習中にヒザを負傷し、チームを離脱した。「なんて声をかけていいのか分からない。頑張ってリハビリをして臨んだばかりなのに…。本人が一番残念だと思うから、メダルを届けてあげたい」。友の無念の思いも胸に、世界へ挑む。【保坂恭子】