聖地・国立でゴールを決めタイ!

 U-20女子W杯に出場しているヤングなでしこは23日、宮城から東京都内に移動し調整を行った。FW田中美南(18=日テレ)はタイ人の母を持ち、同国で生を受けた。大洪水の被害を受けた故郷の親族を励ますためにも、決勝トーナメント進出がかかった1次リーグ第3戦のスイス戦(26日、国立)で今大会初ゴールを狙う。

 夕暮れの空の下、田中美の日焼けした頬に汗が光る。ボールを操る足元の技術と、笑みを浮かべた時に印象的な口元は、どこか日本人離れしている。初戦メキシコ戦では右ウイングでフル出場し、前日22日のニュージーランド戦では後半途中から出場した。引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まるスイス戦は先発が濃厚。「縦に突破するのが持ち味。何度も突破して点を取りたい」と大会初ゴールを目指す。

 母チャリンダさん(45)はタイ人。両親と兄が母の親族に会いにタイを訪れた時、田中美は現地で誕生した。「日本の南で生まれた美人」という意味で、美南(みな)と名付けられた。生後すぐに帰国して神奈川・川崎市で育ったが、小4の時には家族でタイを訪れ、バンコクの海岸で水上バイクを楽しむなど、田中美にとってタイは立派な故郷だ。

 そのタイを、昨夏から今年にかけて大洪水が襲った。バンコクにある親戚の自宅も浸水する被害を受けた。昨年3月に起きた東日本大震災に続き、故郷を襲った大災害。「日本の地震もタイの洪水も、映像で見ただけでも信じられなかった。だけど、被害を受けた人たちは想像以上につらいと思う。自分が一生懸命プレーすることで、元気を与えられたらいい」と願う。

 一番の理解者でもあるというチャリンダさん。田中美は母の写真を携帯している。遠い南国の親族を思い、今大会に臨んでいる。【由本裕貴】

 ◆田中美南(たなか・みな)1994年(平6)4月28日、タイ生まれ。兄の影響で川崎ウイングスFCでサッカーを始め、日テレ・メニーナに入団。今季からベレーザ昇格。10年のU-17W杯では3試合に出場して1得点。家族は両親と兄。161センチ、52キロ。血液型AB。

 ◆日本の決勝トーナメント進出(2位以内)条件

 26日の1次リーグ最終戦、既に敗退が決定しているスイスに○か△でA組2位以内が決定し、決勝トーナメント進出が決まる。●でも同日のニュージーランド-メキシコ戦でニュージーランドが○なら日本は2位で進出、同カードが△ならメキシコと得失点差、メキシコが○ならニュージーランドと得失点差の争いになる(得失点差が同じなら総得点で順位を決定)。A組の日本は1位通過ならB組2位、2位通過なら同組1位と準々決勝で対戦。B組は第2戦終了時で1位がナイジェリア、2位が韓国となっている。