<コンフェデレーションズ杯:日本0-3ブラジル>◇1次リーグA組◇15日◇ブラジリア

 ザックジャパンのプライドが、粉々に打ち砕かれた。開幕戦でブラジルと対戦し、FWネイマールにゴールを許すなど完敗。大黒柱のMF本田圭佑(27=CSKAモスクワ)が後半にガス欠を起こすと、チームも勢いを失った。本田は「今日の試合は完敗。自分たちの実力」と、敗北を潔く受け入れた。初戦を落とした日本代表は、19日にイタリア(日本時間20日午前7時開始、レシフェ)と対戦する。

 ブラジリアの夕立が、足の止まった本田に降り注いだ。ボールを受けても前半のようなキレを失い、守備では相手を追えない。最後にボールに触れたのは、後半34分。中盤でボールを受けたがパスミス。好機を逸した。もはや、本田の姿ではない。ピッチ脇から交代を告げられ、鉛のような足を引きずりながら後半44分にピッチから去った。どっしりと座ったベンチから、完敗を見届けた。

 終了のホイッスルが鳴っても、立ち上がることはなかった。1度水を飲むために立ち上がったが、再び座った。右腕をベンチにかけ、敗戦を振り返っていたのだろう。ただ、表情にはうっすらと笑みを浮かべていた。反対サイドでMVPに輝いたFWネイマールがインタビューを終えた時、立ち上がってテレビの前で語り出した。

 「残念です。非常に残念です。(昨年10月の)前の試合と違って、前線から行かなかったが、立ち上がりで向こうのクオリティーで失点してしまった。思った通りに試合を運べなかった。でも悔しいですけど、仕方ない。今日の試合は完敗。自分たちの実力を受け止めて、あと2試合しっかりと気持ちを切り替えたい」

 完敗-。認めざるを得ないほど、ブラジルは強かった。前回0-4で敗れたときは「簡単に勝ったら、この先、面白くなくなるやん」と希望さえ感じていた。失点数こそ1点減らしたが内容は歴然。ピッチにいた自身が一番分かっていたのだろう。自ら完敗を認めた。本気になった王国との差を、ただただ痛感するしかなかった。

 前半は奮闘した。それだけに、終盤の「ガス欠」が余計に浮かび上がった。前半6分の直接FK、ドライブ回転をかけたシュートを放つと、同9分にはMF清武の右クロスを左足ボレー。同19分には中央から仕掛け、キックフェイントでDFダビドルイスをかわして右足ミドルを放った。前半だけで3本のシュートを浴びせたが、後半はわずかに1。時間を追うごとに運動量が落ち、勢いを失った。同時にチームもゴールへの推進力を失った。エースが試合体力のなさを露呈したことで、日本の「本田依存症」も色濃く映った。

 相次ぐけがに、5月以降まともに出場したのはロシア杯の2試合と、W杯出場を決めた4日のオーストラリア戦だけ。11日のイラク戦出場も右太ももの張りで回避し、試合中は練習用パンツのままだった。2月からリハビリと復帰を繰り返し、試合を走り抜くスタミナを欠いていた。

 本田にとってブラジルは大きな存在だ。8年前の05年3月、U-20代表としてブラジルを訪れた。名古屋でネルシーニョ監督から才能を認められ、迎えたプロ1年目。ブラジル人と「連係を深めたい」と、クラブにお願いしてポルトガル語講座まで受けた。

 「僕がサッカーを始めたのは、ブラジルと無関係ではないんでね」。そう言った8カ月前のブラジル戦でも、ポーランドの空から冷たい雨が降り注いでいた。切っても切れないブラジルから喫した敗北。試合後の取材ゾーンでは問いかけに、首を横に振るだけ。完敗の2文字を、重く受け止めているようだった。【栗田成芳】