【ニューカッスル(オーストラリア)9日】FW本田圭佑(28=ACミラン)が、理想を捨ててアジア杯2連覇を成し遂げる。サッカーのアジア王者を決めるアジア杯が開幕した。日本代表は、12日の1次リーグD組初戦のパレスチナ戦に向けて非公開調整を行った。練習後に上半身裸になって遠藤、岡崎、乾と連係を確認した本田は「きれいなサッカーはしない」と宣言。守備を固める格下相手には華麗なパスサッカーでは勝てないことを訴えかけた。

 すっかり日が暮れたピッチで、本田は練習着を脱いだ。上半身裸になると、筋肉質の体から噴き出した汗が緑の芝に落ちる。遠藤、岡崎、乾と話し始めると、次第に熱を帯びてきた。興奮気味になり、身ぶり手ぶりでポジショニングを指示。守備のプレスのかけ方から、攻撃のイメージまでの共通理解を仲間に求めた。夏真っ盛りの現地に涼しい風が吹いても、本田の周囲は常に熱かった。

 「いよいよ(開幕)だなという気持ち。結局(相手が)引いてくると(攻撃の)スペースがなくなるんでね。無駄なミスをなくすことを考えないといけない。この暑さですからね。きれいなサッカーはしない方がいい。自分たちも(理想は)期待しない方がいい」

 理想を追い求めることよりも結果を重視した。これまでは華麗にパスを回した攻撃を追求してきたが、14年W杯ブラジル大会は1勝もできずに1次リーグ敗退。象徴的なのは、2戦目のギリシャ戦(昨年6月19日)だった。勝たなければ決勝トーナメント進出の可能性が薄くなる一戦は、10人になって完全に引いた相手を崩せずに0-0の引き分け。結果的にあの試合が敗退の要因になった。今大会も初戦のパレスチナは守備を固めてくる。だからこそ、速攻でも、泥臭く体ごと押し込む得点でもいい。本田は繰り返し訴えかけた。

 「凡ミスを減らすこと。いいサッカーをすることよりも、ミスを減らすことの方が大事だと思います」

 2連覇こそがW杯で惨敗した日本にとって、最高の自信回復になる。そして、アジアでは常に頂点にいなければいけないという重圧もある。前回大会はMVPの活躍で頂点に導いた。今回も優勝しか眼中にない。

 「W杯とは求められるものが違いますから。アジア杯は(王者として)より慎重に入る。カウンターも(4日の)練習試合では出なかったけど、行ける時は行くことも大事だと思う。やっとさん(遠藤)や(香川)真司がボールを持った時は一番得点率が高まる。前の3人は、彼らがボールを持った時にいいポジションを取らないといけない」

 最近2大会の初戦で、日本は格下に引き分けスタート。理想は捨てて勝利を求める。その先に2連覇への道が開ける。【益子浩一】