【シドニー(オーストラリア)21日】アギーレジャパンで唯一全9試合に先発しているDF森重真人(27=東京)に暗雲が漂った。前日20日の1次リーグD組最終戦のヨルダン戦で顔面を強打。脳振とうのような症状もあり、別メニューで調整し、ランニングも控えた。明日23日のアラブ首長国連邦(UAE)との準々決勝の出場を回避する可能性が出てきた。日本代表はメルボルンから準々決勝が行われるシドニーへ移動し、練習した。

 1度は走り始めたが、すぐにうつむき足を止めた。森重は、練習場を半周ほどしたところでランニングをやめ、ストレッチ用のマットに寝そべった。ヨルダン戦に出場した主力組がランニングをする中、1人別メニュー。取材ゾーンでも下を向いたまま、呼び止める声に応じずにバスへ乗り込んだ。シドニー郊外の練習場に到着した際も、複数の選手につらそうな表情をしながら説明。不屈の闘志を見せ、ヨルダン戦でフル出場した代償は大きかった。

 ヨルダン戦の前半38分に、競り合った相手選手の後頭部に顔面を強打した。口内の裂傷だけではなく、相方の吉田も顔色の異変に気づくほどの衝撃だった。それでも90分間立ち続け、日本の1次リーグ3試合連続無失点に貢献。しかし、日本協会関係者によると、強打した部位が口や顎のため、その衝撃で頭が揺れた影響が懸念されるという。加えて中2日という過密日程。大事を取って、準々決勝UAE戦の出場回避を選択したとしても不思議ではない。

 新体制発足当初から、アギーレ監督から高い評価を受け、全試合に先発していた。センターバックとしてだけではなく、現在は長谷部がプレーしている中盤の底、アンカーでも起用された。9月の初陣から親善試合6試合と、今回のアジア杯3試合すべてに、唯一先発出場し続けてきたが、初めてスタメンから外れることになるかもしれない。

 1次リーグを3連勝で勝ち抜いた日本を、裏で支えたのは間違いなく守備陣だ。本田や香川らを擁する攻撃は、日本の武器。しかし吉田や長谷部、そして森重を中心とした後方の選手が、体を張って奪ったボールを、前線へとつなぎ攻撃を仕掛ける。それが日本の形となって結果を出して、手応えをつかんだ矢先のアクシデント。代役は塩谷が濃厚で、主将の長谷部が「これまで以上に総力戦になる」と語ったようにバックアップメンバーの活躍は不可欠だ。2連覇への道のりは、決して平たんではない。【栗田成芳】

 ◆アギーレ体制での森重

 唯一全9試合に先発出場中。攻守の切り替えをうながすキーマンになっており、相手のボールを奪い返して日本の攻撃に転じたプレーを示す「ボールゲイン」で、チーム最多の計72回(データスタジアム調べ)。20日のヨルダン戦でも自陣ペナルティーエリア付近で森重が相手FWとの空中戦に競り勝ち、そこから清武→武藤とつながり、武藤のクロスから後半37分の香川のゴールが生まれた。