<14年8月、福岡合宿>

 U-21(21歳以下)日本代表の第3回国内合宿は、初日の練習が約30分遅れで始まった。理由はミーティング。手倉森監督が時間をオーバーして熱弁したためだった。内容は「W杯敗退は、あのチームだけの責任じゃない。日本サッカー全体の責任だ」。6月の大阪合宿に続いてA代表を意識させ「人ごとと思わないでくれ。日本が4年後のW杯ロシア大会で挽回できるかどうかは我々リオ世代にかかっている」と力説した。

 迎えた合宿中、東京ではA代表の新監督に就いたハビエル・アギーレ氏の会見が行われていた。兼任コーチとして仕えることになるA代表のトップと、偶然にも考えが一致。「11人全員が守れて攻められるチームにする」と就任会見で語られた抱負は、仙台の監督時代から数え切れないほど口にしてきた「全員守備、全員攻撃」と重なっていた。

 練習では新システム「4-3-3」を試したが、これも同じだった。アギーレ氏が「ベースは4-3-3」と話す前から、福岡合宿で導入すると決めていた陣形。「アギーレる(あきれる?)ほどの偶然」と、とりあえずライフワークのダジャレを飛ばして驚いた。

 ▼練習試合(対J2福岡)2○0【得点者】大島僚太、岩波拓也

 練習試合は快勝した。翌9月開幕の仁川アジア大会(韓国)に向けた腕試しは「4-3-3」で試合に入り、柔軟性を試すため3バックと5バックにも挑戦。選手にも内緒だった「システム七変化」をサプライズで披露した。前半は1回、後半は3回も布陣変更。90分間で計6システム(注)を試し、基本陣形の「4-4-2」も加えれば実に「七変化」のショーだった。

 手倉森監督は「選手には事前に言わなかった。ミーティングでも映像を見せてない」と不敵に笑った後、狙いを解説した。「テーマは『柔軟性』と『割り切り』です。状況に応じて戦えなければ世界で勝てないから、わざと伝えなかった。どんな使われ方でも力を出せるようになってほしい。それが代表選手の『コンプロミソ(責務)』」。最後はアギーレ氏の言葉を引用して成果を強調していた。