タク、頼んだ! 明日22日からの五輪アジア最終予選の決勝トーナメントで得点が期待されるFW浅野拓磨(21=広島)に、深い絆で結ばれるきょうだいがエールを送った。発信元は7人きょうだいの四男で大体大サッカー部1年の雄也さん(18)。三男拓磨は9人の大家族を支えに大勝負へ進む。

 のどかな三重県菰野町に、浅野きょうだいは生を受けた。快足自慢の7人。運動会では皆がたすきを掛け、リレーのアンカー。その中で昨春、大体大に入学した雄也さんが「頭2個分速かった」と証言するのが浅野だ。1年生ながら大学選手権でゴールを決めた弟は、うらやましげに兄を応援した。

 雄也さん タクには負けたくないけれど、誇りに思いますね。FWなんで、点を取ったら騒がれる。点を取って欲しいです!

 今年の元日、数年ぶりに家族全員がそろった。浅野と雄也さんが2人そろって「ボールは蹴らずに投げるものでしょ」と諭すのは末っ子で長女の心春(こはる)ちゃん(4)。「女の子なので、かわいらしく育ってほしい…」と雄也さん。“アイドル”が自然と足でゴムボールを扱うほどのサッカー一家。長男将輝さん(24)は小学校に入り、地元のペルナSCに入部。弟全員がその背中を追った。

 兄弟は味方であり、最大のライバルだった。浅野の小学3年時には、4人が同時にペルナSCに所属。学校から戻るや、外でボールを蹴り合った。午後6時の門限に間に合わず家を閉め出されても、懲りない兄弟4人は庭を使って相撲大会を催した。

 洗濯機は一日中稼働。朝は6合のご飯が炊かれ、母都姉子(としこ)さん(50)は4つの弁当を作った。食事は早い者勝ち、起床が遅れるとご飯はない。小学校の体操服はお下がりが基本で1代前のデザインを浅野兄弟だけが使用していた。大家族ならではの様子を振り返り、雄也さんは「タクが一番家の手伝いをしていた」と語る。浅野の力の源であり、よりどころは家族だ。

 雄也さん 浅野家ってみんな、むっちゃ家が好き。親もきょうだいも好き。僕もホームシックです。仲良いのには自信があります。

 明日22日から始まる一発勝負。家族の期待を一身に背負い、浅野は日本のヒーローを目指す。【松本航】

 ◆浅野拓磨(あさの・たくま)1994年(平6)11月10日、三重・菰野(こもの)町生まれ。四日市中央工では3年連続で全国高校選手権に出場。準優勝した2年時は7ゴールで得点王。13年に広島入りし、昨季は32戦8得点でベストヤングプレーヤー賞。7人きょうだいの三男で、父智之さん(50)母都姉子(としこ)さん(50)長男将輝さん(24)次男晃平さん(23)四男雄也さん(18)五男史也さん(17)六男快斗さん(14)長女心春(こはる)ちゃん(4)の9人家族。171センチ、70キロ。