兄ちゃんありがとう-。

 3年ぶり2度目出場の正智深谷(埼玉)は明徳義塾(高知)に0-1で敗れ、初戦で姿を消した。

 MF小島遥主将(3年)は「勝てなくて悔しいです。兄を絶対超えてやろうと思っていたのですけど…」と涙をこらえた。

 兄は同校が選手権に初出場した時、U-22日本代表FWオナイウ阿道(20)と2トップを組んでいた凌さん(21)。現在も順大でサッカーを続けている。凌さんの背中をずっと追って、幼稚園からボールを蹴り始めた。

 そんな兄も選手権では1回戦負けだった。この日、スタンドで見守った凌さんも「僕たちは初戦敗退だった。勝って正智深谷の歴史をつくってほしい」と見守っていたが、願いは届かなかった。

 中学3年の時、スタンドから見た選手権の舞台で戦う兄の姿は今も印象に残っている。選手権から帰ってきた兄は、ちょっぴり大きな存在に見えた。そして兄貴風を吹かせられた。「俺は選手権に行ったぞ。やっぱり全国に出ないとな」。そんな兄が憧れだったが、言われるたび、悔しかった。

 だから本当は「兄ちゃん、俺は全国で勝ったぞ」と、上から目線で言い返してやりたかった。だが、1点が遠かった。でも、今年の高校総体では県1回戦敗退だったチームでも、兄と同じ舞台に立てたことは誇りだ。そして兄のおかげで成長できた。次、凌さんに会ったら、こう伝えるつもりだ。「ありがとう。でも全国は難しいね」。