川崎フロンターレが10人の劣勢で2点差をひっくり返す「ミラクル逆転劇」でベガルタ仙台を下し、優勝戦線に踏みとどまった。0-2で迎えた後半37分、DFエウシーニョのゴールで1点を返すと、エースで主将のFW小林悠(30)が後半39分に同点弾、同42分に勝ち越し弾を決めた。

 小林は「ハーフタイムにオニさん(鬼木監督)が、こういう試合を勝つチームがタイトルを取るチームだ、と発破を掛けてくれた。2失点して厳しいなと思ったけど、エウソン(エウシーニョ)がよみがえらせてくれた。その瞬間、いけると。こういうときに決めるのが自分だと強く思ってやっていた」。2得点はいずれも、ペナルティーエリア外からのミドルだが「しんどすぎてボールが運べなかった。打っちゃえと思って」と笑いながらも「逆に力が抜けたかな」とほっとした表情を見せた。

 今季は主将の大役を任されている。シーズン序盤は「自分が真っ先に守備にいかなくては」など、主将の重責がのしかかり点が取れない時期も経験した。4月のセレッソ大阪戦では、PKを外し先制点を逃し、チームも敗れたことがある。そんな主将を支えたのが、ベテランMF中村憲剛(36)、副主将のDF谷口彰悟(24)ら中堅選手だった。C大阪戦後は、中村が「下を向くな。お前が下を向いたらみんなが下を向く」と励まし、谷口ら中堅選手も「FWとしての仕事に集中できるように」と最後方から声を出し小林をサポートした。小林も「主将の肩書は気にしていない。今はFWだから、との考えでやっている。今はFWとして点を取ることが主将の仕事だと思っている」。この日でシーズン自己最多の17得点を決め、しっかり主将の仕事を全うしている。

 ただ、前半の戦い方には手厳しかった。前線でプレスをかけても中盤の選手が連動せず、「パスを出して動く」の基本もおろそかになり、フロンターレらしさがまったく出なかった。奇跡的な勝利にも、小林は「たまたま、点が入ったから勝っただけ。前半の戦いを見つめ直さないとこれから先、厳しくなる。この勝利を喜んでいる選手はいないと思う」と気を引き締めた。自身のプレーに関しても「シーズンの疲れがでてきているのかなと」とミスが多かったことを挙げた上で「試合を通して、良くなくても点を取るのがFW。そこに残りこだわっていきたい」と前を向いた。【岩田千代巳】