MF本田圭佑(32)が日本に帰ってきた。日本勢を打ち負かそうとする存在として。オーストラリアAリーグの強豪メルボルン・ビクトリーの一員として9日に帰国した。12日のアジア・チャンピオンズリーグ1次リーグ第2戦で、広島と対戦する。

縁というべきか。凱旋(がいせん)の場は平和の地・広島に決まった。

平和。本田が、自ら発信してきた言葉でもある。18年12月2日、自身のツイッターにつづった。

「もし世界から戦争がなくなり平和になる術があるとすれば、それは教育革命しかない。人が人を殺め、戦争を始める。でも人がもし感情をコントロールすることができれば争いは減る。個人的にも好きで勉強を続けてる脳科学を親を含む教育者が理解すれば、子供達にとって素晴らしい教育になるよ」

平和。理想であることは誰もがわかっている。一方で、現実味がないような、はかないイメージを持ち合わせた言葉でもあるように思う。自分になにができるのだと、無力感も覚えかねない。安易に口にすることが危うい言葉だ。

18年より前から、本田は発信を続けてきた。17年7月19日。メキシコの名門パチューカへ入団が決まり、背番号2を選んだ理由を語った。

「世界平和へのあこがれをずっと抱いている部分がある。2はそのままピース。意味をつなげました」

そして翌17年7月20日、自身のツイッターにつづった。

「2=Peace=平和

戦争は経験したことはなくても日本人が世界平和を声に出すべきだと思ってます。

どんなに不可能に近くても理想は捨てたらいかんでしょ」

08年から名古屋を飛び出してオランダ、そこからロシア、イタリア、メキシコ、そしてオーストラリアとプレーを続けてきた。最後に国内でプレーしたのは15年6月。12日の試合に出場すれば、日本代表としてガーナと国際親善試合を行って以来286日ぶり。クラブだけで見れば07年12月の天皇杯5回戦HondaFC戦以来12年ぶりとなる。その地が広島になった。

9日の午前中に広島入り。あたたかな日差しが差した午後、調整のための散歩でチームメートとともに原爆ドームを訪れた。

帰り際、自身もSNSで発信している平和という部分で重なる広島でプレーすることについて問いかけた。本田は短く答えた。

「祈っても平和はこない、ということです」

ただ願っているだけでは、現実は変わらない。考え、たとえ失敗を重ねながらでも、チャレンジを繰り返して進んでいく以外にない。安直な問いかけに対しての、そんなメッセージだったと理解している。そして、口にするのがはばかられることを堂々と言葉にするスタイル。「ワールドカップ(W杯)優勝」を公言したように、本田自身の変わらない哲学を見た気持ちになった。

選手として、サッカーをどう平和に寄与させていくのか。その意味で、本田が自身の言葉にどう立ち向かっていくのか。そんなことを考えさせられた。【岡崎悠利】