今季限りでの引退を発表したJ1横浜F・マリノスの元日本代表DF栗原勇蔵(36)が2日、横浜市内でのチーム練習後に取材に応じ、現在の心境などを語った。

栗原は中学年代から横浜の下部組織で育ち、02年にプロデビューして以降は横浜一筋で18年間プレーした。栗原は「マリノスではサッカーももちろん、まずは人間の部分を成長させてもらいました」と感謝し「(マリノス一筋のキャリアに)全然全く後悔していない。また生まれ変わってサッカー選手になったとしても、マリノスにずっといたい」とあふれるクラブ愛を口にした。

横浜とはここ1、2年間にわたり今後のキャリアについて話し合っていたことも明かした。現在チームは首位に立っており、2位FC東京と直接対決する最終節で引き分け以上か、敗れても3点差以内であれば、栗原も在籍していた04年以来15年ぶりの優勝が決まる。自身の引退セレモニーも予定されているホーム日産スタジアムでの最終決戦に向けては「自分は試合には絡めていないですけど、すごく頼もしい後輩たちなので。このまま自分たちのやるべきことをやれば絶対優勝できると思うので、とにかくブレずにやりたいと思います」と意気込んだ。

栗原の主な一問一答は以下の通り。

-引退はいつ頃から考えていた

栗原 ここ数年、試合に出ることも少なくなってきていて、チームの(スポーティング・ダイレクターの)小倉さんとかと1、2年かけてどうしていこうかという話はしていたので、そういうのは頭の中にあった。正式に決めたのはやっぱりここ2、3週間ででした。

-チームメートには伝えていたのか

栗原 小倉さんには話はよくしていましたが、チームメートでは今日初めて知った後輩もいた。悪いことしたなと思いましたけど、表では悲しいふりをしてくれて(笑い)。チームがこういう状況で変に刺激するのは嫌だったのでギリギリまで言わなかった。何人かには昨日、前もって言ってはいたんですけど、全員とはいかなかった。

-引退を報告した人からはどんな言葉をもらった?

栗原 大体、みんなお疲れさまと言ってくれて。びっくりとかではなく、よくやったねとか、そういう言葉をかけてもらったのも多かったし、中にはまだできたんじゃないのって言う人も何人かいましたけど、自分の中では精いっぱいやってきたつもりで、それが今年だったのかなと。もう限界ですとちゃんと説明しました。

-今まで多くの先輩らの引退を見送ってきたと思うが、いざ自分がこういう立場になり、どんな思いか

栗原 今日の朝、みんなの前で報告しましたが、そういう機会は入団した時の自己紹介以来だったので。懐かしいというか。自分の中では本当にマリノス一筋でやって、やり残したことがないと言ったらあれですけど、最後に今年優勝して終われれば、本当に悔いのないサッカー生活なので、頑張りましょうという話はみんなにしました。

-どんなプロ生活だったと感じているか

栗原 中学1年の子どものころからマリノスに入って、本当に子どもでしたし、サッカーももちろん、まずは人間の部分を成長させてくれた。サッカーをやっていなかったら、どういう風になっていたかわからないし、学校の担任の先生にも『サッカーだけは絶対に続けなさい』って言われたりとか。そんなむちゃくちゃやってた時の自分をちょっとまともな大人にしてくれたのはマリノスだと思うので、感謝したいです。

-プロ生活で印象に残っていること

栗原 うれしい思いもいっぱいしましたけど、そういうことよりも自分の中では悔しい思いのほうがすごく残っていたりして。勝負の世界なので、それを糧に成長してきた。特に心に残っているのは、13年に優勝できなくて、そこから何年かマリノスでやれて、今年は本当にそれがあってのことだと思うので、それはよかったと思います。

-引退後は何を

栗原 社長も小倉さんもいろいろ考えてくれていて、明確なものは決まっていないが、マリノスでいろいろ見て、勉強して、自分に何が向いているかを探る準備期間をもらっている。それをまずやれればいいかなと思います。

-サポーターへ一言

栗原 感謝の言葉しかない。それに尽きます。長い間、応援してくれたし、苦しい時も声をかけ続けてくれたので、心から感謝するということをサポーターに教えてもらったので、それを伝えたい。

-マリノス一筋という自分が選んだ道をどう振り返るか

栗原 全然全く後悔していないし、それがあったからこそ、みんなに送ってもらえるというのもある。本当にまたもう1回生まれ変わってサッカー選手になったとしても、マリノスにずっといたい。

-横浜ではレジェンドと言われる選手でも、今まではなかなかチームに残る人はいなかった

栗原 先輩たちをリスペクトしてやってきましたが、そういう選手が少なくて、自分がいい見本になれればなと思う。今後、自分の頑張り次第で、そういう風になっていければいいかなと思います。

-今後の準備期間で目指すのは指導者なのか、スタッフなのか、何か思い描いているものは

栗原 今すぐにこれっていうのは本当になくて。マリノス自体が好きですが、好きだけじゃだめだと思うし、自分が一番、力発揮できるのは何なのか。自分に向いているのは何なのかをちゃんと見極めて、何でもいいという言い方もおかしいですけど、チームの役に立てれば。それが現場なのか、会社なのかはわからないですが、これからどっちに向かっていくか決めていければ。

-マリノスはどんな存在か

栗原 自分にとっては家族なので。家族のためにみんないろいろやるじゃないですか。それと一緒ですね。

-自身の後継者を指名するなら誰か

栗原 やっぱり喜田選手ですね。小学生の頃からマリノスでやってきて、トリコロールの血が流れているのも彼だし、ああいう人間性というか、人間もなかなかいないので、頑張ってもらいたい。小学生の頃から知っていますが、今ではキャプテンもやって本当に立派になったなと思う。将来、喜田がどこに向かうかわからないですけど、自分がやれることをやって(姿を)みせていけたら。

-引退にあたって、体のきつさはあったのか

栗原 正直に言うと、痛いところはひとつもないです。だから、もったいないと言う人もいますが、気力というか、そっちの方が限界というか。もちろん試合も出ていないので体力的なところも落ちてますけど、体はどこも痛くなくて。気持ち的な部分が大きかったです。

-昨年引退した中沢さんら先輩たちには相談した?

栗原 相談は誰にもというか、ほとんどしてないですね。報告はもちろんしましたし、みんなお疲れさまと言ってくれたのがうれしかったです。マリノスでやめることも決めていたし、相談しても無駄だったので。自分で決めました。

-プロになった時に思い描いていた通りのサッカー人生だったか

栗原 悔いは残ってないです。1年目とかに思い描いていたもの以上のものができたと思う。こんなに試合に出れて、こんなに長くいるとも思っていなかったので、100点以上だと思います。想像以上でした。

-サッカー以外で挑戦してみたいことは

栗原 ちょっと前はいろいろあったが、どうしても歳なのか、ちょっとそのへんで体を動かそうと思うと、思うように動かなかったりして。自分は体を動かすことが好きなので、他のスポーツとかって思っていたけど、ちょっと厳しいなと思って。このままおとなしくしていようかなと思います。

栗原は今季最終戦となる7日のホームFC東京戦で引退セレモニーを行い、サポーターへ最後のあいさつを行う。