30日に開幕する第98回全国高校サッカー選手権。大会に出場する近畿勢の話題や注目選手を全6回で紹介します。1回目は兵庫代表・神戸弘陵(4大会ぶり10度目)の主将MF沖吉大夢(3年)。究極の夢はJリーグ・ヴィッセル神戸とダブル日本一です。

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神戸弘陵の主将MF沖吉が今冬に描く究極の夢は、Jリーグ神戸とのダブル日本一だ。沖吉は中学時代、神戸ジュニアユースに所属した。ユースに昇格できなかったが、神戸弘陵に進学し、高校選手権で全国切符をつかんだ。

「僕は上(ユース)には上がれなかったけど、友達もいるのでヴィッセル神戸を応援しています」

12月8日にはプレミアリーグ西地区で戦う、神戸ユースのFW小田裕太郎の応援に出かけた。ジュニアユース時代に同期だった小田は来季、トップチーム昇格を勝ち取り、晴れてJリーガーになる。その神戸は天皇杯でベスト4まで進出している。21日の準決勝清水エスパルス戦に勝てば、元日に新国立競技場でクラブの初タイトルを懸けた決勝に臨む。同じ関東圏で神戸弘陵とのダブル優勝が実現できれば、これ以上のドラマはない。

「僕らが大みそかの1回戦(秋田商戦)を突破し、神戸は天皇杯の準決勝に勝って元日に優勝する。そうすれば、僕はさらに勢いに乗りますよ」

沖吉にとっては自らの未来を懸けた舞台にもなる。有力大学の推薦入試に合格する実力はあったが、あえて道を閉ざし、来秋に米国留学に行く決断をした。

現地の大学で英語を学びながらプロ選手を目指す。選手権などのプレー動画を米国の関係者に見てもらい、少しでも環境のいい留学先からオファーを受けたい。一方でプロだけではなく、現地ではボランティアや実業家に対する興味もある。

幼少期から家族付き合いするオーストラリア人男性がいた。機会があれば、その男性の故郷アデレードでクリスマスを過ごすなどし、世界の文化に触れる楽しみを覚えた。

今春からは神戸弘陵に米国人のスマイル・コーチが就任した。「君こそベストキャプテン」と励まされ、英語の指導も受ける。渡米することに迷いはなかった。

今は神戸弘陵での完全燃焼を誓う。「僕らはほぼ毎日、紅白戦をする。自分たちの特徴や課題をその都度、話し合い、明日へとつなげてきた」と沖吉はチームへの自信をみなぎらせる。谷純一監督(46)も「選手と約束した日本一を実現したい」と静かな闘志を燃やす。同監督によると、もし神戸が勝ち進み、神戸弘陵も初戦を突破すれば、部全体で天皇杯決勝を生観戦する可能性もあるという。

沖吉にとって、自らの名前のように大きな夢を見る冬が始まる。

 

◆沖吉大夢(おきよし・たいむ)2001年(平13)9月5日、神戸市生まれ。神戸ジュニアユースから神戸弘陵へ。安定した技術と判断力を持つボランチ。174センチ、70キロ。