昨季最下位の湘南ベルマーレが、しぶとく勝ち点を積み重ねている。リーグでは3月21日のセレッソ大阪戦から、横浜F・マリノス戦、名古屋グランパス戦と3試合連続で引き分け。1試合なら「たまたま」と言えるかも知れないが、7日は2位の名古屋グランパス相手に無失点。昨季までは試合終了間際に失点し、勝ち点を失っていたが、今季は上位陣相手にしっかり勝ち点を手にしているだけに、勝負強さを身に付けていると言ってもいい。

7日の名古屋戦では、前半43分に中盤の底のMF三幸が2度の警告を受け退場となり、10人の劣勢に立たされた。それでも、ハーフタイムでは、選手から「こういう状況はなかなかないから楽しもう」という声が出た。浮嶋敏監督も、名古屋が前節にFC東京と引き分け連勝がストップしたことから「数的優位になって、名古屋は絶対に勝たないといけないと思っているはずだ。後半の前半をしのげば相手も焦りが出てくる。後半の前半をしのぐことでチャンスは出てくる」と声をかけていた。

主将のDF石原広教を中心に、徹底した「中締め」で中央を固めた。幾度となく決定的なシーンはつくられたが、守備陣の体を投げ出すシュートブロックもあり、無失点で切り抜けた。

石原は今季の粘り強さをこう分析した。

石原 去年の方が今年より、自陣に引いて、相手の攻撃を受ける試合が多かった。その中で、中を使われて失点、最後に寄せきれなくて失点、セットプレーでやられたりする試合が多かった。バックラインは去年を経験している選手が多い。去年の反省でないが、寄せ方だったり、時間帯によっての守備の仕方、意思統一が今年はよくできている。声を出す選手も多くなっている。

中でも常勝軍団の鹿島アントラーズから加入したMF名古新太郎の存在は大きいという。石原は「(名古)新太郎くんは、常勝軍団の鹿島から来て、声を出して伝えてくれている。すごく、前向きに助け合う部分が出ていた」。名古は攻守でリーダーシップを発揮するタイプ。何よりも勝利にこだわる「鹿島イズム」を、湘南の若手に還元しているのだろう。

浮嶋監督も「今年も最初は、ちょっとのところで組織が崩れる場面があった。でも、昨年と違うのは、元々のベースがあること。プレスに行くところ、しっかりしのぐところを、状況に応じてすべきことを、みんなの描く絵が合っている。今年は(去年より)半年早いというか。半年早く共通意識が持てている」と3試合連続での堅守を分析する。

課題の攻撃ではブラジル人助っ人のFWウェリントンが入国し、14日間の待機期間を経てチームに合流する。連戦の中、集中を切らさない守備が継続し、勝ち点をこつこつ積み上げれば、J1残留も見えてくる。【岩田千代巳】