ゲーム界のキングが、ついにJ1初得点を決めた。

セレッソ大阪のプロ4年目、FW中島元彦(21)が10日、アビスパ福岡戦(ヤンマー)で待望のJ1初ゴールを奪った。1点を追う後半24分、右サイドから中央寄りにカットインし、利き足ではない左足で豪快で芸術的なゴール。貴重な同点ゴールになった。

「素直にうれしかった。打った瞬間入ったと思った。ミドルシュートが自分の武器。福岡に引いて守られていたので、ベンチで(自分の武器が)効くなと思っていた」。途中出場からわずか7分後の出来事だった。

“セレッソの中島”といえばピッチ上より、もしかしてゲーム界で有名だったかもしれない。指先が器用で昨春はサッカーゲームで全国3位に。ゲームの企画で民放のテレビ番組にも出演した経験がある。

本業ではC大阪ユース(U-18)時代、高校2年で2種登録されたほど将来を嘱望されていた。

だが、ユース卒業と同時にプロ契約を結んだ18年から昨季までの3年間は、J1での出場経験はない。本人も「自分自身はユースから昇格して、すぐに活躍するイメージだった」。逆にC大阪がU-23チームとして参加していたJ3では、計78試合19得点。その能力に昨年7月、J2アルビレックス新潟からオファーが届き、期限付き移籍で35試合5得点。結果を出し、ついにC大阪から復帰要請が届いた。

若手育成に秀でたレビークルピ監督も今季、C大阪に復帰。中島にとっては本来は最高のタイミングだったが、開幕戦でベンチ入り後は調整遅れもあって、7試合連続でベンチ外。前節横浜Fマリノス戦で、途中からようやくJ1初出場を果たしたばかりだった。

中島に追い風だったのはチーム内に故障者が続出し、新型コロナウイルスの感染者が出た影響で、レビークルピ監督(本人は陰性ながら万全を期すためベンチ外)ではなく、前節とこの試合は小菊昭雄コーチが代行指揮を執っていたことかもしれない。

同コーチは「(中島の)パンチ力に期待して出した。公式戦の中で決めきる力は非凡なものがある」と、ミドルシュートに期待して投入した。若手や控え層の底上げに、ブラジル人監督に負けないほどの思いを持つ同コーチだったからこそ、中島を2戦連続で起用したはずだ。

「(J3に参戦した)U-23でプレーし、自分の短所であるスプリント、走力を求められた。それがJ2で長所になったりした。ミドルシュートはずっと通用していたので、J1の舞台になって決められてよかった」

1学年下のDF瀬古歩夢(20)が、東京五輪代表へ近づくなど同じ下部組織出身の選手が台頭する。170センチ、66キロのストライカーは焦りを感じながら、回り道をしながら、プロの第1歩を踏み出した。試合後は自身のツイッターに「初ゴール。次は勝ちにつながるゴールを決められるように練習から頑張ります。応援ありがとうございました」とコメントを寄せた。18日に22歳の誕生日を迎える、C大阪にとっては待望の新星誕生だ。【横田和幸】