名門ジュビロ磐田がJ1復帰を決めた。引き分け以上で来季のJ1昇格が決まる水戸戦は3-1の完勝。今季3試合を残し、J1自動昇格圏内の2位以内が確定した。昨年10月に鈴木政一監督(66)が就任。02年のJ1制覇を成し遂げた指揮官がクラブを立て直した。元日本代表の服部年宏ヘッドコーチ(48)と中山雅史コーチ(54)も参謀役として再建に尽力。クラブOBの力も結集させ、圧倒的な強さでJ1に返り咲いた。

昇格が決まると、磐田の選手たちは歓喜の声を上げた。敵地に駆けつけた700人以上のサポーターも待ちわびた瞬間だった。先月27日に体調不良で検査入院した鈴木監督は、退院したが療養中で不在。指揮を執る服部ヘッドコーチは「政一さんのためにも早く決めたかった。ホッとした」と胸をなで下ろした。

今季の強さを象徴する試合だった。前半12分、セットプレーからDF大井が頭で決めた。頼れる主将は「先に取れてよかった」。先制した試合はこの日も含めて今季23戦負けなし。同15分にMF大森が今季初得点を挙げ、後半6分にはFWルキアンが3点目。先手必勝で逃げ切った。

昨年10月、16年ぶりに磐田の指揮を任された鈴木監督には明確なビジョンがあった。「J1で戦えるチームになること」。目先の昇格だけでなく、土台作りに力を入れた。守備はハイプレスとブロック形成を試合状況と時間帯で使い分けることを整理させた。チームは今年5月の14節からJ2タイ記録の7試合連続無失点。理想の「いい守備からいい攻撃」が形になった。

服部ヘッドコーチは練習で細部にこだわった。パスの質やトラップする位置など。人とボールが連動する攻撃を実現するために妥協しなかった。中山コーチの居残りでのシュート練習も日課になった。攻撃は今季リーグ最多の71得点。計6度の逆転勝利など、勝負強さも光った。

監督が入院する事態にも、選手は「監督のために勝とう」と結束し、指揮官不在で4連勝。クラブ記録の16戦負けなしで昇格を決めた。来季は3季ぶりにJ1を戦う。服部ヘッドコーチは「政一さんがチームを作ってくれた。選手は成長した」と目を細めた。「昇格」ではなく「復帰」。名門復活へ、磐田がいるべき場所に戻ってくる。【神谷亮磨】