今季限りでの現役引退を発表していたC大阪の元日本代表FW大久保嘉人(39)が22日、大阪市内で会見を開いた。引退を決断するまでの揺れ動いた心境を明かしつつ、プロ21年間に悔いはないと断言。第2の人生は指導者になり、夢である「大久保監督」の実現を目指す。今季はJ1残り2試合と、4強に進んだ天皇杯で日本一になって有終の美を飾るつもりだ。

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泣いて、笑って、最後まで感情を隠さない、大久保らしい約1時間の会見だった。19日の発表から沈黙を貫いていた39歳は、会見の冒頭数十秒で早くも泣き始めた。引退を告げ「本当に最高のサッカー人生でした」。C大阪カラーのピンクと白の2枚のハンカチで、何度も涙をぬぐった。

突然の引退表明に思われるが、精神的な限界を感じていた。国内外のべ12クラブで活躍も「細い糸が、1本ぎりぎりつながっている状態でやっていた」。素顔は神経の細やかな青年も、ピッチでは過度に強気を貫き、乱闘寸前のプレーや審判への暴言もあった。「逆境に立ち向かっていかないと、力が出ないタイプの選手だった」。16日に1人で決断し、家族に伝えた。

J1最多記録を更新し191ゴール。40歳になる来季へ、C大阪から契約延長の提示を受けたばかりだった。前人未到200得点へ「取りたい気持ちはあったが、自分の力が足りなかった。ここでやめた方がいいのかなと思った」という。

この日、言葉にこそしなかったが、第2の人生は監督になる夢がある。「指導者のライセンスは(現状)ゼロなので」とし「サッカーを勉強したい。自分のイメージは野性的だったかもしれないが(ゴールへ)逆算しながら常にプレーし、確率を求めていた。経験は伝えないと」と話す。

森島社長は「改めて偉大な男」と功績をねぎらい、クラブのアンバサダー就任を検討する。その先に「嘉人は(プロ野球日本ハムの)新庄監督のようにメッセージ力が強い。日本を引っ張るような存在に」と、ビッグボス誕生も期待する。型破りなストライカーが数年後、監督としてピッチに戻ってくる。【横田和幸】

○…元日本代表FWでC大阪OBの西沢明訓氏(45)がサプライズゲストとして登場し、惜別の言葉を寄せた。大久保が兄貴分として慕い、代理人として今季のC大阪復帰に動いていた。西沢氏は「これほど迷惑をかけ、批判され、それでもこんなに愛された選手は今までいなかった。まだ必要とされている中で自分で決断して引退する。そういう選手は限られている」と壇上で語りかけた。

○…会場には大勢の著名人からの花が飾られた。Mr.Childrenからは「たくさんのゴール、感動をありがとう」。ナオト・インティライミは「夢と感動をありがとう」とメッセージを寄せた。神戸時代に当時、高額移籍金を払い獲得した楽天グループの三木谷浩史会長兼社長からの花や、4人の愛息からの「パパ、20年間お疲れ様」とのメッセージもあった。