「お祭り男」が、浦和での有終の美を飾った。浦和が大分を2-1で下し、3大会ぶりの優勝を飾った。1-1の後半ロスタイムに、途中出場のDF槙野智章(34)が右CKからの流れで、頭で押し込んだ。契約満了のため今季限りで退団する男が、浦和ラストマッチで来季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)切符をもたらした。クラブは歴代最多タイ8度目の制覇で、今季限りで現役引退するMF阿部勇樹(40)の花道を彩った。

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埼玉・浦和の居酒屋も相変わらず、店内は赤々と染まった。浦和駅西口から徒歩5分の「酒蔵 力 浦和本店」。今井俊博店長(42)は、店内の大型スクリーンで、MF阿部が天皇杯を掲げる姿を見届けた。「1つの時代が終わったというか、本当に悲しいですね」と目を真っ赤にした。

浦和ファン、サポーターにとっての憩いの場。店員のユニホームも赤。ファンが酒を片手に「浦和談議」に花を咲かす。阿部も時折、店を訪れ、モツ煮込み、メンチカツを好んで食した。今井店長は「普通に席に座っているから、他のお客様も驚いていましたよ。外を通る人も二度見したりして」と懐かしむ。

3、4年前、阿部はFW興梠と海外旅行に向かう前に店を訪れた。なぜか「力」が“集合場所”だった。15~18年まで所属したFWズラタンとの再会に向けて、成田空港に向かう前に立ち寄ったという。そんな飾らない姿に今井店長、多くのサポーターが心をつかまれた。

ただ、いつもジョッキの中身はソフトドリンクだったという。今井店長は「ストイックだった。だから、この年まで出来たんでしょうね」。かつては、自由席確保のために、駒場スタジアムでテント“生活”していた今井店長。今では、阿部と家族ぐるみの付き合いとなった。「今度は阿部監督として戻ってきて欲しいですね」と、しみじみ語った。【栗田尚樹】