JFLの鈴鹿ポイントゲッターズに移籍したカズ(三浦知良、54)が、いきなりチームを変えた。カズは1月31日、三重・鈴鹿市の三重交通ガーデンで行われたチームの今季初練習に参加。J3昇格という目標に向けて約2時間、軽く体を動かした。J2に降格した横浜FCから実質4部のJFLへの移籍。環境の違いを楽しみながら、練習用ストッキングのチーム支給を勝ち取る「大仕事」もやってみせた。開幕戦は3月13日で、ラインメール青森と対戦する。

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超大物加入に緊張感漂う練習前のロッカールームで、カズが声をあげた。「ストッキングはないんだ」。Jクラブなら、練習用ユニホーム一式はチームが用意する。しかし、鈴鹿ではシャツとパンツだけで、ストッキングは「自前」だった。初練習後の会見で、カズは「短い靴下しかなかったので、すね当てはテープで止めた」と苦笑いで話した。

環境に恵まれたJクラブなら考えられないことも、プロアマ混在のJFLでは普通。もっとも、カズの話に、会見で隣に座った吉田雅一社長の表情が変わる。「若手に『カズさん何とかしてくださいよ』って言われたんです」とのレジェンドの言葉に「はい、早急に準備します」と吉田社長。合流初日で「ストッキング支給」が決まった。

国内1部(J1)から4部(JFL)への移籍。環境変化は当然のものと受け止め、カズ自身は楽しんでいるような時さえある。「どこでやってもサッカーは同じ」が口ぐせ。それでも「変えるべきこと」「変えられること」には声をあげる。日本サッカーを変えてきた男は、JFLでも考えを貫く。

ミーティング後の初練習では、円陣の中で「ミーティングは嫌い」。これには兄の泰年監督も「今後は考えます」と苦笑い。そして「カズの言葉は影響力が強い。みんなが成長できる環境ができた」と喜んだ。

初日にして強烈な印象を残したJFL鈴鹿のカズ。「難しいと思うし、無理だけど、目標は全30試合出場で30ゴール。ダンスもします」。55歳で迎える3月13日のリーグ戦開幕へ、カズは走る。【荻島弘一】

〇…カズの初練習に約120人のサポーターと30人を超す報道陣が集まった。昨年始動日はファン10人で報道陣0人。J発足時からカズのファンだという坂田美薫誉さん(66)は「まさか来てくれるとは。得点して、(カズダンスを)踊ってほしい」と大喜び。前夜の鈴鹿入りで、まだ何も分からないというカズは「(大好きな映画の)寅さんで伊勢神宮が出てきた。自分もふらふらしたい。鈴鹿といえばF1のアイルトン・セナ。チャンピオンになった印象が強い」と話していた。