<天皇杯:川崎F0-0(PK8-7)柏>◇9日◇決勝◇国立競技場◇観衆6万2837人

川崎フロンターレが柏レイソルを下し、前回20年度以来3大会ぶり2度目の優勝を成し遂げた。延長戦を終えて0-0。PK戦は10人ずつ蹴る死闘を制した。

今季、新たに主将に就任したMF橘田健人(25)が復調し、貢献した裏には、気の置けない友人との交流があった。

小学校、高校、大学が同じ冨吉優斗さん(24)は、鹿児島の実家が徒歩圏内のご近所さん。大学時代、「カップル」と呼ばれるほど仲が良かった2人の付き合いは今も続く。

「責任感は強いですけど、彼は基本的に楽観的なので、勝てるように『我慢、我慢』みたいな感じだったと思いますよ。落ち込んだのは、高校生の時に彼女に振られたときくらいしかみたことないです(笑い)」 歳は冨吉さんが1つ下だが、「ユウト」「ケント」と呼び合う親友だ。今季、橘田が試合から遠ざかっている最中も月に1~2度は遊んだ。お酒は飲まない。ボウリングのスコアはともに200を超える「ガチ勢」で、真剣勝負を繰り広げる。ただご飯を食べてくっちゃべったり、家でトランプをしたり、ゴルフの打ちっぱなしに行ったりした。東京・二子玉川小で教員を務める冨吉さんと橘田は、全く異なる生活リズムだが、「ケントは僕がサッカー選手になれなくてもずっと仲良くしてくれます」。サッカー選手になったからといって偉ぶらない。変わらない関係がお互いに心地よい。

チームが不調で、橘田自身が試合に出られない時期も、思い悩む姿は親友には見せなかった。橘田自身も当時をこう振り返る。

「まああいつにはちょっとそういうの見せたくないので(笑い)。あいつもたぶん俺に気を使わないから、普通にばかにしてくれるし、それがまあいやすいというか」

仲の良いチームメートとも食事に行くことはあるが、完全にサッカーから離れることはできない。遊ぶ時は目いっぱい楽しむ。それが重圧を忘れさせてくれたという。「全く関係ない仕事の人たちと遊ぶのは息抜きでした。自分からしたら、遊んでくれるだけでもありがたいので」。照れくさそうに感謝した。

冨吉さんは、この日、国立で現地観戦した。橘田のユニホームは一緒に来た弟に譲り、自分は「8番」のタオルマフラーだけ身につけた。テレビのフラッシュインタビューで今季の振り返りを問われた際に、涙を見せた橘田を見届け、「自分には見せなかったですけど、苦しい時期もあったんですね。その時に自分がよく遊んでいたということですね」と笑った。続けて「お疲れさまでしたと言いたいです」。かけがえのない友の存在が、橘田を救っていたようだ。【佐藤成】