川崎フロンターレが柏レイソルを下し、3大会ぶり2度目の天皇杯優勝を成し遂げた。延長戦を終えて0-0。PK戦は10人ずつ蹴る死闘となった。

PK戦を通して、若きキャプテン橘田健人(25)の涙腺は崩壊していた。

最初に瞳が潤んだのは、5人目のFWゴミス(38)がPKを蹴るとき。決めれば優勝のシーンで元フランス代表のキックが防がれ、涙が引いた。

次は6人目DF登里享平(33)が外した時だった。後攻の相手に決められれば、負けが決まるピンチに「ウルッときた」。相手が外して、涙が再び引いた。そして最後にGKチョン・ソンリョン(38)が10人目をセーブした瞬間、涙があふれ出した。試合に勝って涙を流すのは初めてだった。

勝利の瞬間、ピッチにしゃがみ込んだが、ソンリョンの元に走るチームメートを慌てて追いかけた。「うれしくて、下にしゃがんだんですけど、行こうと思って」と苦笑いで振り返った。

今季、主将に指名された。チームが不調に陥っただけでなく、その重圧からか、プレーに思い切りの良さが見られず、ベンチ外を経験した。しかし自分のやるべきことに目を向け、地道に練習に取り組み、レギュラーを奪取。苦しんだ末のタイトル獲得だった。

運も味方した。この日、コイントスは全て勝利。前半は日差しを考慮して攻める方向を変えた。PK戦も川崎Fサポーターが陣取るゴール側で行った上で先攻を選んだ。

PK戦前のコイントスを終えてベンチ前に戻ると、4人目のキッカーを伝えられた。「人生で一番緊張した」。普段感情を表に出さないタイプだが、力強くゴールネットを揺らすと自然とガッツポーズが出た。今季苦しんだ思いを爆発させた。

相手の圧力を受けた前半は、思うようにボールを受けられず、良さを発揮できなかった。しかし徐々にアジャストし、セカンドボールの回収や球際の強さ、広い守備範囲で存在感を発揮。延長戦でも変わらずタフに走り、その背中でチームを鼓舞した。

試合後、テレビのフラッシュインタビューで今季の振り返りを求められると、再び目に光るものを浮かべた。「1年間、苦しい時期もあったんですけど、みんなで優勝できて幸せです」。そう言うと涙がほおをつたった。多くの人の胸を打つ瞬間だった。

シャイな性格で、準決勝後に「優勝はしたいけど、(掲げるのは)いやです」と話していた優勝杯を力強く中央で掲げた。笑顔だった。「うれしかったですし、ホッとした気持ちでした」。主将の役割をしっかりと果たした瞬間だった。【佐藤成】