女王が屈辱をバネに、偉業へ挑戦する。全日本高校女子サッカー選手権の開会式が10日、静岡の磐田市民文化会館で行われた。大会史上初の3連覇を狙う常盤木学園(東北1・宮城)は今日11日に本庄第一(関東6・埼玉)との初戦に臨む。昨季チャレンジリーグを制した強豪も、本年度主要大会で日ノ本学園(関西1・兵庫)に連敗。勝ち進めば決勝でぶつかるライバルに雪辱を果たし、最強の座を奪還する。

 常盤木学園が“定位置”に返り咲く。数々のなでしこジャパン選手を輩出してきた阿部由晴監督(51)は「平年並みですよ」と謙遜するが、まさに大人顔負けのチームに仕上がった。2年ぶりに優勝したチャレンジリーグでは、FW佐々木美和(3年)の14ゴールを筆頭に、なでしこリーグINAC神戸入りが決まっているFW伊藤美紀(3年)、MVPにも選ばれたMF白木星(2年)がそれぞれ13得点をマーク。1年生FW小林里歌子は新人賞に輝いた。1試合平均で4得点を超え、得失点差はプラス68。攻守に完成度は高い。

 しかし、越えなければいけない壁がある。順当なら決勝であたる日ノ本学園には、昨年8月の高校総体、11月の皇后杯で連敗。高校総体はPK戦の末に敗れ、そのまま日ノ本学園が優勝。皇后杯にいたっては「3年間であんな負け方は初めて」(佐々木)という0-6での大敗を喫した。伊藤も「相手についてのスカウティングが不十分だったし、失点してから修正できず、緊張の糸が切れてしまった。自分もことごとく決定機を外してしまった」と険しい表情で振り返る。

 皇后杯後、しばらくはショックを引きずって練習にも打ち込めない日々が続いていたものの、大会を目前にチーム状態は上向き。伊藤は「初の3連覇というプレッシャーもありますし、日ノ本のことも相当意識してます。それでも、とにかく最後は勝って終わりたい」と力強くリベンジを誓う。過去5年で4度の優勝を誇るが、唯一敗れている10年決勝の相手も日ノ本学園。最大のライバルを破った先に、前人未到の頂がある。【亀山泰宏】