【グアム(米国)1日=永野高輔】初のオール札幌開催-。Jリーグが1日、12年日程を発表した。札幌の今季ホームゲームはリーグ戦、ナビスコ杯ともに札幌ドームと札幌厚別公園競技場での開催となった。室蘭入江運動公園陸上競技場、函館千代台公園陸上競技場での開催はなし。両競技場はJリーグが13年度に導入するクラブライセンス制度の基準を満たしておらず、開催を断念することになった。

 これもJ1昇格の厳しさだ。室蘭は96年のクラブ創設時から16年利用した準ホーム。函館も00年から12年公式戦を開催してきた。昨季もそれぞれ1試合ずつ行ったが、J1での競技場基準には及ばず、開催なしとなった。「函館、室蘭サイドには話をして理解していただいた」とクラブ幹部。今季は史上初の全ホーム試合札幌開催が決まった。

 やむを得ない事情があった。来年度からJリーグが導入するクラブライセンス制度では、J1は固定席1万5000席や、メーンスタンド中央部にVIP席を50席以上設けるなど厳しい基準が定められている。2競技場は現時点で、基準をクリアしておらず、ホーム試合開催で、札幌のクラブライセンスが剥奪される可能性がある。J2では認められたが、今季はJ1参加のため、開催をあきらめることになった。

 試合開催はなくても2地区のファンに向けた新たなアプローチは考えていく。クラブでは「応援していただいた室蘭や函館のファンの方がチームと触れあえる機会をつくりたい」と両地区に選手を派遣してサッカー教室を行うなど、新イベントを計画している。グアム合宿中のチームにも事情は伝えられており、ある選手も「室蘭、函館がなくなるのは寂しいが、僕らが協力できることは何でもやっていきたい」と話した。

 前回J1だった08年も同制度をベースにしていたが今季ほど厳密ではなく、ナビスコ杯を函館で開催するなど暫定措置が認められていた。今回はJリーグ本体としての本格導入。条件を満たさなければ下部リーグへの降格もあるだけに、クラブとしても苦渋の決断となった。

 ◆クラブライセンス制度

 Jリーグが競技、施設、組織運営・人事体制、財務、法務と5分野の基準を設け、審査に通らない場合はライセンスが交付されずリーグに参加できない。競技場関連ではJ1では固定席で1万5000人収容のほか、記者席やVIP席の数、ロッカールームの広さまで細かい規定がある。マーケティング担当者や下部組織の責任者を置くことも義務化。財務基準では、直近3期連続で赤字になったクラブにはライセンスが交付されず、JFLなど下部リーグへ降格となる。