<J1:東京3-2浦和>◇第25節◇14日◇国立

 20年東京五輪決定弾は、「国立男」だった!

 東京FW平山相太(28)が終了間際にダイビングヘッドを決め、浦和戦9年ぶりの勝利を呼び込んだ。7年後の五輪開催決定後、初めての試合。しかも64年大会メーン会場での一戦だった。国見高時代から、元祖怪物としてゴールを量産し、慣れ親しんだピッチで通算23得点目をマーク。さらにJ史上初となる全5得点が「頭弾」というおまけも付き、改修前の国立で大きな存在感を放った。

 慣れた国立を、平山が激走した。ゴールラインを割って、看板を飛び越え、陸上トラックを横切った。ゴール裏スタンドによじ登ると、歓喜に踊る観客に向けて、高々と腕を上げた。後半45分の決勝弾。2点リードを追いつかれて迎えたFKに、190センチの体をかがめ頭から飛び込んだ。「頭しか考えていなかった」。体をねじりながらのダイビングヘッドはゴール右に吸い込まれた。聖地での通算23点目のゴールだった。

 まさに鬼に金棒、平山に国立だ。国見高時代から含め、公式戦23点目。今季リーグ戦でも2戦いずれも途中出場で2ゴールをマークしている。得点の数だけ、高校全国制覇、五輪出場、天皇杯優勝と数々のドラマを、この聖地で生んでいるはずだが、当の本人は「決めたゴールは全部一緒」と淡々。10代で怪物と言われた男は、大物感が28歳になっても全く薄れない。

 運命的な巡り合わせに、クラブが抱えたジレンマをも吹き飛ばした。20年東京五輪開催決定後、初の試合。バックスタンドのてっぺんには聖火。試合前にはパラリンピアンとして招致に一役買った佐藤真海がゲストとして来場した。祝勝ムードを演出したが、クラブの事前告知には「東京五輪」の文字はなかった。宣伝文句に使えば、IOCから警告を受ける可能性があるからだ。東京唯一のJ1クラブとして、招致活動をチームを挙げて応援してきたにもかかわらず…。そんな中、ピッチから祝砲を挙げた。

 平山自身、04年アテネ五輪に出場し08年北京五輪アジア予選で本大会出場に貢献した。東京五輪開催が決まった8日朝、ニュースで知った平山は「うれしいことだし、7年後に個人的に関われたらいい。でも今は五輪のことを考えている余裕はない」。今季出場の12試合はすべて途中から。復活のきっかけにと、燃えている。【栗田成芳】