一瞬のズレが、惨事につながった。後半36分、DF吉田麻也主将(34=シャルケ)のクリアが小さくて精度を欠いた。ギリギリでMF守田英正に届いたボールを相手に奪われ、ワンチャンスをものにされた。防戦一方の相手に対し、攻撃に転じたタイミングで焦りが生じた。守備陣に負傷者が出た影響などでベストメンバーが組めず、相手を0点で抑えることができず、悔やみきれない負けを喫した。

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その一瞬しか危機はなかった。しかしそこで失点してしまった。吉田のクリアが小さく、微妙にずれた。守田が倒れながらクリアしようとしたが、相手に奪われた。ボールがつながれ、フリーでシュートを打たれた。ゆっくりとゴールへ向かうボール。イレブンは目でボールを追い、ネットが揺れるのを確認すると、落胆の表情。交代のためライン際に立っていた南野は怒りの声を上げた。

吉田は「我慢されている中で、まさにドイツ戦で自分たちでやっていた守備を、ブロックをしていた。プレスは中途半端で徐々に良くないところが出た」。前半45分間は守り重視の探り合い。日本は後半から攻撃に転じたが、相手はDF5人、MF4人の2列のブロックのまま。それに跳ね返される展開で、徐々に焦り出した。

一気に勝負をかけたいところ。吉田中心のDF陣は、たまに攻めてくる相手ボールに対して、大きなクリアではなく、小さく味方につないで攻撃機会を増やそうとした。吉田は「(失点場面では)守田につなごうとした。つなげられると思った」。しかしそれが裏目に出た。高い位置でボールを拾われた。そのわずか1度のズレが命取りになってしまった。

初戦のドイツ戦に勝った代償は大きかった。レギュラーDF冨安と酒井を負傷で欠くことになった。それでも吉田中心に2ボランチとも連動し、スムーズに試合を運んだ。前半4バックでスタートし、途中から3バックへ。システムの変化にも動じることはなかった。しかし、あの一瞬だけが悔やまれる。

「スペインには勝つしかないので、リカバリーといい準備をしてすべてをささげないといけない。スペインに向けてやっていくのみ。勝ち点3を取りにいく」と吉田。中3日の試合が続くが、疲労なんて言ってられない。W杯3大会連続出場の主将が、今度こそDFラインをまとめ、無失点でチームを決勝トーナメント、さらにその先へ導く。【盧載鎭】