日本代表森保一監督(54)の人生に最も影響を与えた1人が現役時代、Jリーグ広島で当時総監督だった今西和男さん(81)だ。森保監督を広島の前身マツダにスカウトし、人間教育まで施した人生の師が、スペインとの決戦に向かう教え子にエールを送った。

来年1月で82歳の誕生日を迎える今西さんは腰の手術を乗り越え、広島市内を毎日、40~50分ほど散歩して健康を維持しているという。心の楽しみは、森保監督が初めて挑むワールドカップ(W杯)だ。

「14年W杯に優勝したドイツは最近、下降線だったとはいえ、日本が勝てる保証はなかった。森保君が選手の気持ちをくんで、ハングリー精神が続くように工夫しているのでは」。26人の心を束ね、つかんだ歴史的勝利を喜ぶ。

今西さんは広島の前身東洋工業でDFで活躍し、マツダでは主に監督、広島では総監督を務めた。日本における事実上、最初のゼネラルマネジャー(GM)として経営、強化、人間教育に取り組んだ人物だ。

「地元広島にはカープがあり、プロ野球人気がすごい。お付き合いがあった山本浩二さんら野球選手は、学校の先生と間違えるほど話し方がうまい。Jリーグの選手も成長するには、専門家を招いての講習会で『見る、聞く、話す』といった、一般社会に必要な人間力を身につけることが大切だと考え、森保君たちに取り組んでもらいました」

その教育課程の中で森保監督には当時から、光るものがあったという。

「森保君は興味のあることに100%食らいつき、人の話を聞いた。目をそらさず、まっすぐ見る。普通、相手が目上だと、頭を下げるもの。(1日の)代表26人の発表会見でも、立派に話していたでしょう」

27日コスタリカ戦の痛恨の敗戦を経て、スペインとの決戦に向かう。今西さんは森保監督のすべてを支持しながら、過去最高のベスト8を目指せ、という。

「今や日本のW杯出場は当たり前になった。これからは本大会で成績を出さないと、マスコミも取り上げてくれない。野球以上に国民に認められるには、結果は大事です。彼ほどサッカーが好きで熱心な子はいなかった。ぜひ、監督でも成功を収めてください。応援しています」【横田和幸】

◆今西和男(いまにし・かずお)1941年(昭16)1月12日、広島市生まれ。舟入高、東京教育大(現筑波大)を経て、63年広島の前身、東洋工業(後にマツダ)に入団し、日本代表としてもプレーした。マツダ時代は監督も務め、オフト監督を招聘(しょうへい)。Jリーグ発足後は総監督、日本協会強化副委員長などを歴任。02年広島のJ2降格で総監督辞任。FC岐阜の社長も務めた。