アルゼンチンがPK戦にまでもつれたオランダとの死闘を制し、準優勝した14年ブラジル大会以来、2大会ぶりの4強進出を果たした。

エースのリオネル・メッシ(35=パリ・サンジェルマン)が1ゴール1アシストと活躍。2点リードを追いつかれて突入したPK戦でも1人目でしっかり成功させ、チームの勝利に貢献した。アルゼンチンにとってはW杯史上最多となる5度目のPK戦勝利だった。

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場外でのコメントで気を悪くしても、試合中に乱闘が起きても、メッシのプレーには少しの影響もなかった。0-0の前半35分。右サイドから中央へドリブルで流れながら、相手選手6人の密集を通すスーパースルーパス。これでモリナの先制弾を演出すると、後半28分にはアクーニャが倒されて得たPKをゴール右に蹴り込んだ。2点差を追いつかれて突入したPK戦では1人目で成功させて勝利への流れを呼び込んだ。

メッシはW杯通算10ゴール。バティストゥータ氏のアルゼンチン代表最多記録に並んだ。さぞかし喜んでいるかと思いきや、試合後に笑顔はなし。怒りの形相で向かった先は相手ベンチで、ファンハール監督に鋭い視線を向けながら「あんたはしゃべり過ぎだ」とまくしたてた。

実は試合前日から気分を害していた。同監督が会見で「PK戦になったら我々が有利だ」「アルゼンチンは我々を恐れている」「メッシは相手がボールを持っているときはそれほど仕事をしない」などと発言していたからだ。さらに試合中には同僚パレデスが相手ベンチにボールを蹴り込んで乱闘騒ぎに。イエローカードは自身に出されたものを含めて合計18枚に及んだ。

そんな荒れた一戦で冷静でいられるわけがなかった。メッシはチーム2点目のPKを決めた後にも、両手を耳に当てる元アルゼンチン代表MFリケルメのポーズでオランダベンチを挑発。これはバルセロナ時代にリケルメを冷遇したファンハール監督への意趣返しとみられている。

ファンハール監督はマンチェスター・ユナイテッド時代にはディマリアとも折り合いが悪く、メッシが敵意をむき出しにするのも無理はなかった。試合後のインタビューでは「ファンハールは良いサッカーをしたと言っていたが、ヤツが(選手交代で)やったのは背の高い選手を置いて、ロングボールを蹴っただけだ」とこき下ろした。

ただ、そんな精神状態で力んでプレーに影響が出ないのがメッシがメッシたるゆえん。今大会3度目、史上最多9度目のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞は当然だった。