「日本人に足りないのは経験だろう」。日本代表に大量リードを許しながら、終盤の猛攻で逆転勝ちしたブラジル代表のサントス主将は言った。

 来季バルセロナ移籍が決まっているエースは「セレソンとして、負けられない」と続けた。

 サッカーの話ではない。先月末に東京で行われたハンドボールの国際試合。日本は素早いパスワークと運動量で残り15分までに5点をリード。強豪相手に勝利は目前だったが、相手のシステム変更に対応できずに受け身になり、逆転を許した。ベルギー戦を暗示するような内容だった。

 言いたいのは、試合のことではない。この日、日本は「隼ジャパン」という愛称で臨んだ初の東京での試合だった。相手は「セレソン」。ポルトガル語で「選抜」という意味の愛称は、サッカーと同じ。ユニホームもカナリア色で、一目でブラジルだと分かる。

 ちなみに、イタリア、ドイツ、ポーランドは競技違いの代表が6月に来日している。ラグビーのイタリア代表「アズーリ」は地中海ブルー。ハンドボール男子のドイツは白と黒、同女子のポーランドは赤。いずれもその国を象徴する「ナショナルカラー」だから、サッカーと同じ色になる。

 多くは国旗にある色を使うが、イタリアの青やオランダのオレンジなど、国旗と関係ない場合もある。日本は日の丸から考えれば赤か白だろうが、サッカーでは青。ハンドボールも青だが、ラグビーなど他の競技には赤(桜色)も多い。競技によって色が違う。

 同じ色なら、違う競技も応援できる。08年北京五輪前、ハンドボールのアジア最終予選で、ハンドボール協会はサッカー協会から応援グッズを贈られた。同じ「青」だからできたが、他の競技では難しい。20年東京五輪で球技の応援を「はしご」する時は、着替えを持っていく必要がある。

 東京五輪には、サッカーなど8競技で16の日本代表チームが出場する。サッカー女子代表の「なでしこジャパン」以降、愛称を付けるのが流行し、全16チームに愛称がある。そして、チームカラーもバラバラ。ほとんど一体感はない。

 「サッカーとバレーボールで応援する人は違う」ということだろうが、どの競技も応援できれば球技をもっと楽しめる。ブラジルやイタリアのように、共通の愛称とカラーがほしい。競技に関係なく、男子は「さむらいジャパン」で、女子は「なでしこジャパン」。そして、ナショナルカラーは青。統一すれば、もっと「日本代表」に感情移入できると思うのだが。

【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)