立て直しのことなら、この人に聞け! 相撲界屈指のサッカー好きの横綱鶴竜(32=井筒)が西野ジャパンに緊急提言した。昨年は4場所連続休場で、進退問題にまで発展したが一転、5月の夏場所では初の2場所連続優勝と劇的に復活した。背水の陣で臨む覚悟を知る角界の第一人者が、大学教授の父譲りの分析力で、立て直しが急務のチームの課題などを指摘した。

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 とにかくは思い切ってやってほしい。それが一番。「代表を背負っているから失敗できない」とか、そういうことを思わないで。失敗することを気にするぐらいだったら、思い切りやって、ゴールすることをイメージした方が絶対にいい。誰が出ても、もう23人に選ばれた人なのだから、失敗しても成功してもいい。ゴール前では思い切ってシュート。年齢的にも次のワールドカップ(W杯)は難しい選手も多い。そういうベテラン選手こそ、やけくそじゃないけど、覚悟みたいなものを持って、思う存分やりきってほしい。

 日本の一番の魅力はパス回し。無駄に外に広がるのではなくパスで崩した方がいい。CK以外、クロスを上げてヘディングで決めたのを、あまり見たことがない。ましてやW杯はフィジカルの強い相手ばかり。宇佐美選手なんかはドリブルがあるから、左から中に切り込んで、パスを出したりシュートを打ったりしてほしい。ただ「上げるだけ上げてみよう」というクロスは絶対にやめてほしい。足の速い選手が多いわけじゃないから、パス回しや連係でやっていくしかない。

 トップ下は本田選手がいいと思う。香川選手よりもヘディングが強いから。トップはスピードがあって、なおかつヘディングもできる武藤選手。でも武藤選手1人だと相手もマークしやすいから、そこに本田選手がいる意味は大きい。クロスよりも速いパス交換の方がいいから右ウイングは香川選手、または岡崎選手。左は乾選手もいいと思う。

 本番では3バックは絶対に無理だと思う。1人1人のスピードがあって、フィジカルも強くないと3バックは厳しい。ポーランドのレバンドフスキをはじめ、相手FWが強いから、1人ではなく2人以上で対応しないといけない。守備的になる時間帯が多いと思うから、4バックにダブルボランチなら、相手FWを複数で挟んで守りやすい。毎試合、本当に厳しいと思う。でも西野監督も実績のある人。もう期待しかない。【取材・構成=高田文太】

 ◆鶴竜力三郎(かくりゅう・りきさぶろう)本名・マンガラジャラブ・アナンダ。1985年8月10日、ウランバートル市生まれ。01年9月に来日し同年九州場所で初土俵。06年九州場所で新入幕、12年春場所後に大関、14年春場所後に横綱昇進。ことし5月夏場所で5度目の優勝。94年にW杯を制したブラジル代表に魅了されて以来のサッカー好きで、主なスポーツ歴はバスケットボール、レスリングなど。186センチ、155キロ。血液型A。