決戦が始まる。日刊スポーツ評論家の宮沢ミシェル氏(54)が、日本戦の観戦ポイントを伝えます。勝負の鍵を握るプレーや選手、戦術などに、さまざまな観点から迫ります。サッカーに詳しくない読者にも、分かりやすく説明し、楽しいテレビ観戦をアシストします。初回コロンビア戦のキーワードは「目の細かい網を張れ!」です。
まずは無失点で90分を終えることを考えよう。実力が均衡するチームと対戦する時、守る側の選手の距離感は7~10メートルでいい。しかし、コロンビアのようにスピード、個人技のあるチームは、その距離感では選手と選手の間をスルスル抜けられる。日本がスペースと感じない空間でも、相手には有効活用できる立派な空間になる。それが、現在の日本とコロンビアの差だろう。
初戦は、5~7メートルに縮めることを勧めたい。当然、西野監督も考えているはず。ピッチに立つ選手たちも、いつもの距離感では、中盤で相手にスペースと時間を与えてしまうことを分かっている。相手攻撃を防ぐには、選手の距離感を狭めて「細かい目の網を張る」必要がある。粗めの網では、小さい魚は捕れない。細かいタッチで繊細なサッカーを仕掛けるコロンビアには、それ相応の網が必要だ。
しかし目が細かいといっても、相手は何度もそういう相手と戦って、その包囲網を破ってきている。左右に大きく揺さぶって、網の目をワイドに広げさせて、自然と中央にできるスペースをうまく使ってチャンスをつくる。そこで大事なのが、網の目を広げるのではなく、網ごと動かすことだ。
例えば、相手が右に展開すれば、全体が5~7メートルの距離を保ったまま右に動き、左にサイドチェンジすれば、全員が連動して左に動く。かなりの運動量が必要で、体力消耗も激しくなる。しかし、その苦労と、中盤がスカスカになって相手に何度もゴールを割られる屈辱をてんびんに掛けた時、やるべきことは自然と分かるはずだ。
守備時に選手の距離が近いと、ボールを奪った時に有効的な攻撃に切り替えられる可能性が高い。ボールを取ったはいいが、パスを出す選手が周囲にいなければ、すぐボールを取られて逆襲をくらう。近い距離に味方がいると、日本が得意とする壁パスもできるし、連動してスピードアップもしやすくなり、攻守のリズムが生まれる。
90分を考える必要はない。足がつって、動けなくなるまで、走って走って相手を苦しめることができれば、短気な性格が多い南米チームは、ほころびが出てくる。時代遅れと言われるかもしれないが、根気よく我慢して汗を惜しまない姿勢に、日本のファンは感動するし、奇跡を起こす可能性も高まる。(日刊スポーツ評論家)