2度のワールドカップ(W杯)指揮を誇る元日本代表監督、岡田武史氏(61=FC今治オーナー)がコロンビア戦の勝利を称賛した。14年ブラジル大会に続き「日刊スポーツW杯特別評論家」に就任。日本トップの経験に基づいて「岡田武史論」を展開する。初戦は10年南アフリカ大会との比較、勝負のあや、両監督の采配から日本サッカーの成長、第2戦セネガル戦の展望を大いに語った。【取材・構成=木下淳】

 日本が勝った。岡田氏が2度目の監督を務めた10年南アフリカ大会以来8年ぶりだ。「感動した。チームとして最後まで頑張ってくれた。アトランタ五輪の『マイアミの奇跡』もそうだったが、本当に持っているよ、あの人は」。笑顔で、早大の先輩でもある西野監督をたたえた。過去5大会で自身しかいなかった日本人監督、勝利監督が誕生し「ようやくだ。これで『岡田の時は…』と言われなくて済む」と相好を崩した。

 岡田氏は南アフリカ大会で本田を1トップに抜てきし、1次リーグ3戦2発と化けさせて16強。「正解はないが、自分だったらどうかと考えると23人の選考から同じようにはできなかったと思う。結果を出した。平均年齢の高さも、勝てば経験が生きた、負ければ高齢と言われるだけ。関係なく、今回の23人から最高の11人を、と西野さんは考えに考えたんだろう。見事に当たった。さまざま組み合わせてのトップ下、真司だったと思う」と称賛した。

 前回は初戦でコートジボワールに逆転負け。途中投入のドログバに流れを一変させられた瞬間を、岡田氏は現地で目の当たりにしていた。今回はロドリゲスが後半から出場。おそらくファンは悪夢の再来を恐れたが「あの交代の後、少しして『いける』と思った。10人なのに、あれだけ運動量が少なくて、かつ負傷明けの選手を入れれば攻め手を失う。前半、クアドラードを下げてバリオスを入れた場面は大正解だったが、ロドリゲスの場面、ペケルマン監督は何を考えたのか? やはり、西野さんは持っている。日本も前半の最後は危なかったが、ハーフタイムの修正が良かった。後半開始直後、ミスにはなったが、2本の縦パスを立て続けに狙ったことが効果的だった。相手を押し下げられたので」。前回からコロンビアを率いて6年目の敵将が采配を誤り、2カ月の西野監督が勝った。W杯は何が起こるか分からない。

 同時に日本の成長も感じたという。「(テレビ解説で元日本代表MFの)福西とも話したが、前回大会ギリシャ戦(第2戦、0-0)の経験も生きたのではないかと。あの時も相手が10人になったが、最後まで崩し切れなかった」。その時に先発し、無得点だった1トップ大迫が今回は決勝点という妙もある。「着実に成長しているなという印象を受けた」とも指摘した。

 勝てばチームが変わることを、岡田氏ほど説得を持って言える人はいない。「自分の時も、初戦でカメルーンに勝って一気に変わった。ただ、当時は戦術やメンバーを変えてカオスだった中、何とか結果を出せたが、西野さんは違う雰囲気がある」という。経緯かもしれない。日本協会は、開幕2カ月前にハリルホジッチ前監督を解任。前回ブラジル大会でアルジェリアを16強に導き、優勝国ドイツを苦しめて「世界で一定の成果を上げた監督を切り、日本人に。その意味を選手は理解していたから1つになった。田嶋会長が『日本はリスクを懸けてチャレンジする』と決断し、選手がよく日本サッカーを背負ってくれたよ」と感謝した。